よしの法律事務所コラム

2017.03.28更新

3月27日、長崎地裁は、諫早湾干拓事業に関して、排水門の開門を求める漁業者側、開門に反対する農業者側、国の3者で1年以上にわたって行われてきた和解協議を打ち切って、4月17日に判決を言い渡すことを決めました。
この和解協議において、開門を求める弁護団は、当初から、開門する・しないの結論を決めるのではなく、開門にかかわるあらゆる論点について協議しようと言い続けてきました。しかし、長崎地裁は、開門に反対する農業者側が、開門を前提にする話し合いには応じられないという意見のみを受け入れ、開門しない場合の代替案としての基金案の検討をひたすら続けました。そして、長崎地裁は2月24日にやっと開門しない案だけでなく、開門する場合に関する協議を併行して協議を行うことを提案しました。しかし、その検討はわずか1回で、しかも、裁判長が転勤することから、さっさと打ち切られました。公正中立である裁判所が、一方の意見の立場でしか検討を行わなかったことは残念でなりません。
福岡高裁で再度和解協議を始められるように、弁護団としていっそうの努力が必要だと感じました。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.03.24更新

東京電力の福島原発事故をめぐる集団訴訟は、全国で約30件起こされ、約1万2000人が原告となられていますが、その最初の判決となります。
国の責任を認めたこと、国の責任を東京電力と同額と判断したことなどは、集団訴訟の全国での最初の判決として、意義は大きいと考えます。
しかし、実際に認められた損害の額は、請求額からすればわずかと感じられるものであり、原発事故の被害者の救済への道は始まったばかりというところかと思います。
9月22日の千葉地裁判決、10月10日の福島地裁判決(生業訴訟)と判決が続いていきますが、原発事故の被害者の救済が少しでも前進すればと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.03.13更新

タクシーの運転手の賃金の請求に関する事案です。歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則における定めがある事案で、その賃金規則の有効性が争われたようです。
労働基準法37条は、「労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり、使用者に対し、労働契約における割増賃金の定めを労働基準法37条等に定められた算定方法と同一のものとし、これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない」ことを前提に、「他方において、労働基準法37条は、労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定をしていないことに鑑みると、労働契約において売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に、当該定めに基づく割増賃金の支払が同条の定める割増賃金の支払といえるか否かは問題となり得るものの、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできないというべきである」として当該賃金規則の定めが公序良俗に反して無効であるという主張を否定しました。
そして、「本件賃金規則における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否か、また、そのような判別をすることができる場合に、本件賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断」すべきとして、原判決を破棄して東京高裁に差し戻すという判断を示しました。
労働者の立場からすると、歩合制があるのに、割増賃金分が差し引かれるというのはバランスが悪いように思われます。差戻審が、どのように整理するかも注目されます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86544

弁護士吉野隆二郎

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2017.03.06更新

福岡県弁護士会の主催で、3月4日(土)の午前10時から午後4時まで、天神地下街1番街(一番北側)イベントコーナーにおいて、1日限定の「まちかど」での無料法律相談会が行われました。私は午前中の設営や運営に参加させていただきました。できるだけ多くの方のご相談を受けるために、相談時間は20分と短く設定されていましたが、今回も多くの方の相談を受けることができました。弁護士会の法律相談センターを知っていただくいい機会だったと思います。

相談ブース等の設置状況

弁護士吉野隆二郎

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2017.03.03更新

職務執行停止・代行者選任の仮処分命令申立てが却下された事案に関して、最高裁に許可抗告された事案のようです。
「取締役会設置会社である非公開会社における、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効」という判断がなされています。
争点が何でこのような一般論が示されたのか決定だけを読むと詳しくは分かりませんが、非公開会社であればそのように考えても問題はないように思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86527

弁護士吉野隆二郎

投稿者: よしの法律事務所

2017.02.28更新

法律の改正によって新設された割賦販売法35条の3の13第1項6号の解釈に関する最高裁の判決です。
判決は「特に訪問販売においては、販売業者の不当な勧誘行為により購入者の契約締結に向けた意思表示に瑕疵が生じやすいことから、購入者保護を徹底させる趣旨で、訪問販売によって売買契約が締結された個別信用購入あっせんについては、消費者契約法4条及び5条の特則として、販売業者が立替払契約の締結について勧誘をするに際し、契約締結の動機に関するものを含め、立替払契約又は売買契約に関する事項であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて不実告知をした場合には、あっせん業者がこれを認識していたか否か、認識できたか否かを問わず、購入者は、あっせん業者との間の立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことができることを新たに認めたものと解される」と改正法の趣旨の解釈を示しました。
そして、「立替払契約が購入者の承諾の下で名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても、それが販売業者の依頼に基づくものであり、その依頼の際、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要な事項について販売業者による不実告知があった場合には、これによって購入者に誤認が生じ、その結果、立替払契約が締結される可能性もあるといえる。このような経過で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るのであり、購入者として保護に値しないということはできないから、割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとして立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても、同号の趣旨に反するものとはいえない」という判断枠組みを示しました。
そのうえで、「名義貸しを行うのは、ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり、上記高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在すること」を告げた上で、「支払については責任をもってうちが支払うから、絶対に迷惑は掛けない。」などの告知の内容が、「契約締結の動機に関する重要な事項に当たるもの」と判断した上で、割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を
及ぼすこととなる重要なもの」に該当すると判断しました。
消費者保護の観点からすれば、妥当な判断のように思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86517

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.02.21更新

1月30日から2月19日まで表記「報告(案)」に対するパブリックコメントが行われていました。624頁にも及ぶ膨大な報告書について、3週間くらいで意見をまとめろというのは無理な話だと思いました。

http://www.env.go.jp/press/103578.html
思い浮かぶところで個人としての意見を出しましたが、その準備の際に10年前のパブリックコメントの際の見解について知る機会がありました。
中長期開門調査を提言すべきであるという意見に対して、「中長期開門についは、調査実施により漁業被害が生ずる恐れがあり、また、その成果が必ずしも明らかでない等との行政判断から、これに代わる方策として、要因解明調査、現地実証等を進められていると認識している。評価委員会は、こうした調査をも含めて、国・県が実施してきた調査結果に基づき、有明海・八代海全体の再生にかかる評価を任務としている。評価委員会は、個別事業の評価を任務としておらず、中長期開門調査を提案する責任が評価委員会にあるとのご指摘は妥当でないと考える」と農水省の代弁をするような回答を行っていました。
その後、2010年12月6日に言い渡された福岡高裁の確定判決により、国は開門する法的義務を負ったのですから、今回は中長期開門調査についても真剣に検討していただきたいと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.02.13更新

過去の逮捕歴について、居住する県の名称との氏名を条件として検索すると、検索結果として提供される状態になっていることからその削除を求めた仮処分の最高裁の決定です。削除するための基準を示した最初の最高裁の決定のようです。
決定では「検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、当該事実の性質及び内容、当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、その者の社会的地位や影響力、上記記事等の目的や意義、上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である」と述べています。
このような比較衡量の判断基準は、民事の差し止めや、厚木訴訟(12月19日付け本ブログ)と同様のものであり、結局は、様々な事情を主張立証していくしかないように思えます。本件では、犯罪の類型が社会的な非難が強いものであることと、居住する県と名前が一致しないと検索できないことを重視しているように思いますが、本件の解決としてこの判断でよかったのかは、詳しい事実関係が分からないと何とも言えないように思います。

弁護士吉野隆二郎

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2017.02.06更新

節税目的による孫の養子縁組が、民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に該当して無効になるのかが争われた事案です。
「養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人となるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない」として、節税の動機と養子縁組をする意思とは併存しうるということを前提に、養子縁組は有効だと判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86480
それでは養子の人数を何人でも増やせば、節税ができるかといえば、「被相続人に実の子供がいる場合1人まで」「被相続人に実の子供がいない場合2人まで」などの税法上の制約もありますので、結論としては妥当なように思います。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4170.htm

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.01.30更新

適格消費者団体が、健康食品の小売販売等を営む会社に対して、同会社が自己の商品の原料の効用等を記載した新聞折込チラシを配布することが,消費者契約(法2条3項)の締結について勧誘をするに際し法4条1項1号に規定する行為(「重要事項について事実と異なることを告げること」によって消費者が「当該告げられた内容が事実であるとの誤認を行うこと」)に該当するとして消費者契約法12条1項及び2項(適格消費者団体の差止請求権)に基づき, 新聞折込チラシに上記の記載をすることの差止め等を求めた事案です。
最高裁は「事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても,そのことから直ちにその働きかけが法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである」として、新聞折り込みでチラシを配布する場合にも、「勧誘」に該当する場合があることを認めました。
結論としては、「本件チラシの配布について上記各項にいう『現に行い又は行うおそれがある』ということはできないから,上告人の上記各項に基づく請求を棄却した原審の判断は,結論において是認することができる。」として差止めは認めませんでしたが、新聞折込チラシでも、その内容によっては、差し止めも可能になるということであり、消費者保護の観点では一歩前進した内容だと思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86454

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所


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