よしの法律事務所コラム

2022.09.28更新

交通事故の被害者が、加害者の加入する自賠責保険の会社に対して、直接請求をしている事案のようです。交通事故の被害者が、労災の給付も受けていたようで、国が、労災の給付を行ったことで取得した請求権に基づき、自賠責保険の会社が、国に対して、自賠責保険の一部を支払っていたようです。
平成29年の最高裁判決では「交通事故の被害者は、労災保険給付等を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は、他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され、上記各直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても、国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で損害賠償額の支払を受けることができる」という判断がなされています。
この最高裁の判決を前提に原判決は「被害者の有する直接請求権の額と同項により国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超える場合に、自賠責保険の保険会社が、国に対し、被害者が国に優先して支払を受けるべき損害賠償額につき支払をしたときは、当該支払は有効な弁済に当たらないというべきところ、本件支払は、被上告人が国に優先して支払を受けるべき損害賠償額につきされたものであるから、有効な弁済に当たらない」として、交通事故の被害者の請求を認めていました。
最高裁は平成29年の最高裁判決につき「被害者又は国が上記各直接請求権に基づき損害賠償額の支払を受けるにつき、被害者と国との間に相対的な優先劣後関係があることを意味するにとどまり、自賠責保険の保険会社が国の上記直接請求権の行使を受けて国に対してした損害賠償額の支払について、弁済としての効力を否定する根拠となるものではないというべきである(なお、国が、上記支払を受けた場合に、その額のうち被害者が国に優先して支払を受けるべきであった未塡補損害の額に相当する部分につき、被害者に対し、不当利得として返還すべき義務を負うことは別論である。)」と判断して、自賠責保険会社への弁済を有効と認めて、原判決を取り消して、交通事故の被害者の請求を否定しました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91302
この最高裁判決を前提にすると、本件のような場合に、交通事故の被害者は、国に対して裁判を起こさなければならなくなりそうなのですが、3者間でバランスをはかるにしても、保険会社の手間を省いて、交通事故の被害者の手間を増やすようなことにならないのか気になるところではあります。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


SEARCH


ARCHIVE


CATEGORY