よしの法律事務所コラム

2019.09.17更新

7月26日に弁論が開かれた諫早湾干拓事業に関する事案の判決となります。
結論として、原判決が破棄され、福岡高裁に差し戻しとなりました。
判決は「本件各確定判決は、平成20年6月及び平成22年12月にされたものであり、かつ、その既判力に係る判断が包含されることとなる主文は要旨『判決確定の日から3年を経過する日までに開門し、以後5年間にわたって開門を継続せよ』というものであるから、本件各漁業権1の存続期間の末日である平成25年8月31日を経過した後に本件各確定判決に基づく開門が継続されることをも命じていたことが明らかである」と判決の文言解釈から当然の判断をしました。
その一方で「本件各確定判決が、飽くまでも将来予測に基づくものであり、開門の時期に判決確定の日から3年という猶予期間を設けた上、開門期間を5年間に限って請求を認容するという特殊な主文を採った暫定的な性格を有する債務名義であること、前訴の口頭弁論終結日から既に長期間が経過していることなどを踏まえ、前訴の口頭弁論終結後の事情の変動により、本件各確定判決に基づく強制執行が権利の濫用となるかなど、本件各確定判決についての他の異議の事由の有無について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする」とも述べています。
しかし、「前訴の口頭弁論終結日から既に長期間が経過していること」を判断要素に入れるべきだとも読めるこの内容には違和感があります。国が確定判決を守らないためにこれまで時間をかけてきたことを、どうして裁判所が正当化しなければならないのでしょうか。国が確定判決を守らないことを裁判所が認めるのであれば、誰も裁判所など信用しなくなります。差戻審でも司法の本質が問われることになるようです。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88916

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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