預貯金債権が遺産分割の対象になるかどうかが争われた事案です。
「遺産分割の仕組みは、被相続人の権利義務の承継に当たり共同相続人間の実質的公平を図ることを旨とするものであることから、一般的には、遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましく、また、遺産分割手続を行う実務上の観点からは、現金のように、評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在することがうかがわれる。」「具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産であるという点においては、本件で問題とされている預貯金が現金に近いものとして想起される。」という預貯金債権に一般的な性質等を前提として述べたうえで、「預貯金一般の性格等を踏まえつつ以上のような各種預貯金債権の内容及び性質をみると、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。 」と判断して 「最高裁平成15年(受)第670号同16年4月20日第三小法廷判決・裁判集民事214号13頁その他上記見解と異なる当裁判所の判例は、いずれも変更すべきである。」と最高裁判例を変更する決定を出しました。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354
遺産分割実務に関しては非常に重要な判例変更となりますが、相続人間の公平から考えるとこの考え方の方がしっくりくるように思います。
弁護士吉野隆二郎
福岡市博多区博多駅前2-10-12-208