よしの法律事務所コラム

2018.08.31更新

東京都の都立高校の教職員が、各所属高の卒業式又は入学式において、国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の職務命令に従わなかったことを理由として、再任用や再雇用の際に不合格としたり、退職後に再任用職員等に採用しなかったことに対して、損害賠償を求めた訴訟の最高裁判決となります。
東京高裁は、本件の不合格などとした取扱は、「被上告人らが本件職務命令に違反したことを不当に重視する一方で、被上告人らの従前の勤務成績を判定する際に考慮されるべき多種多様な要素等を全く考慮しないものであって、再任用制度等の趣旨に反し、その運用実態とも大きく異なるものであるから、本件不合格等に係る都教委の判断は、客観的合理性及び社会的相当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用をしたものに当たる」と判断して、損害賠償の一部を認めました。
しかし、最高裁は「被上告人らの本件職務命令に違反する行為は、学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって、それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い。加えて、被上告人らが本件職務命令に違反してから本件不合格等までの期間が長期に及んでいないこと等の事情に基づき、被上告人らを再任用職員等として採用した場合に被上告人らが同様の非違行為に及ぶおそれがあることを否定し難いものとみることも、必ずしも不合理であるということはできない。これらに鑑みると、任命権者である都教委が、再任用職員等の採用候補者選考に当たり、従前の勤務成績の内容として本件職務命令に違反したことを被上告人らに不利益に考慮し、これを他の個別事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価し、そのような評価に基づいて本件不合格等の判断をすることが、その当時の再任用制度等の下において、著しく合理性を欠くものであったということはできない」と裁量権の範囲内であると判断して原判決を取り消して、被上告人らの損害賠償請求をすべて棄却しました。
1999年の国旗国歌法の成立の際には、当時の小渕首相も「新たに義務を課すものではない」との談話を発表していました。
しかし、この判決の考え方を前提とすれば、再雇用等が問題となる教員は、国家の斉唱をしないと、戒告等の注意処分を超えて、再雇用が認められず職を失うことになります。そうすると、再雇用等に関係する教員は、憲法で保障された思想良心の自由(憲法19条)が実質的に保障されないことになります。本当にそれでいいのか疑問に思われます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87885

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2018.08.22更新

薬剤師の時間外労働に関する賃金の支払いが争われた事案のようです。
東京高裁は、「本件では、業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのかが被上告に伝えられておらず、休憩時間中の労働時間を管理し、調査する仕組みがないため上告人が被上告人の時間外労働の合計時間を測定することができないこと等から、業務手当を上回る時間外手当が発生しているか否かを被上告人が認識することができないものであり、業務手当の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことはできない」と判断していました。
最高裁は、雇用契約書などに「業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた」ことや、実際に支払われた業務手当は「1か月当たりの平均所定労働時間(157.3時間)を基に算定すると、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するもので」「実際の時間外労働等の状況と大きくかい離するものではない」ことなどを根拠に、業務手当の支払を時間外手当の支払いとみることができるとして、原判決を取消しました。
実際の労働状況と大きくかい離していないということは1つの大きな要素であったのではないかと思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87883

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2018.08.07更新

平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、2018年8月13日(月)から8月16日(木)までお盆休みとさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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