よしの法律事務所コラム

2020.09.17更新

河川法23条の許可を受けて河川から取水して利用している土地改良組合が,取水している用排水路に,公共下水道が整備されていないため,し尿等を各自の浄化槽により処理して排水している周辺の住民らに対して,使用料相当額の損害の支払を求めた裁判の最高裁判決となります。原審の高松高裁は,使用料の請求の一部を認めていました。
最高裁は「公水使用権は,公共用物である公水の上に存する権利であることに鑑み,その使用目的を満たすために必要な限度の流水を使用し得る権利にすぎないと解され,当該使用目的を満たすために必要な限度を超えて他人による流水の使用を排斥する権限を含むものではないというべきである。そうすると,被上告人は,本件水路に被上告人が河川法23条の許可に基づいてかんがいの目的で取水した水が流れていることから,その水について当該目的を満たすために必要な限度で排他的に使用する権利を有するとはいえるものの,直ちに第三者に対し本件水路への排水を禁止することができるとはいえない。」「したがって,本件水路に被上告人が河川法23条の許可に基づいて取水した水が流れていることから,被上告人が第三者に対し本件水路への排水を禁止することができるとし,上告人ら及び選定者Aの本件排水により本件水路の流水についての被上告人の排他的管理権が侵害されたとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある」と判断して,原判決を破棄して,使用料の請求を認めないという判断をしました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88812%E3%80%80
許可に基づく権利だから第3者への排他性がまったく認められないのかというと,排他性が認められないと困るようなケースもありそうな気もするのですが,用水路は公的財産(市の財産)なので条例で使用料を決めるべき事案であるという趣旨の補足意見を読むと,結論としては妥当ではないかと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2020.09.02更新

家事事件手続法154条2項において、「家庭裁判所は、次に掲げる審判において、当事者(第二号の審判にあっては、夫又は妻)に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる」と定められており、同項4号では、「財産の分与に関する処分の審判」が挙げられています。
この条文を前提に、財産分与の審判とあわせて、不動産(建物)の明渡しを命じることができるのかが、争点となった事案となります。
最高裁は「財産分与の審判がこれらの事項(当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法)を定めるものにとどまるとすると,当事者は,財産分与の審判の内容に沿った権利関係を実現するため,審判後に改めて給付を求める訴えを提起する等の手続をとらなければならないこととなる」が、「家事事件手続法154条2項4号は,このような迂遠な手続を避け,財産分与の審判を実効的なものとする趣旨から,家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者に対し,上記権利関係を実現するために必要な給付を命ずることができることとしたものと解される」うえ、「同号は,財産分与の審判の内容と当該審判において命ずることができる給付との関係について特段の限定をしていない」ことなどを根拠に「家庭裁判所は,財産分与の審判において,当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき,当該他方当事者に分与しないものと判断した場合,その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは,家事事件手続法154条2項4号に基づき,当該他方当事者に対し,当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当である」と判断しました。
本決定では東京高裁に差戻しになっていますが「判断に沿った権利関係を実現するため必要と認め」られるかどうかを審理するためではないかと思われます。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89622
審判後に改めて給付の訴えを提起する手続きを必要とすべきかと考えると、このような判断でもやむを得ないように思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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