河川法23条の許可を受けて河川から取水して利用している土地改良組合が,取水している用排水路に,公共下水道が整備されていないため,し尿等を各自の浄化槽により処理して排水している周辺の住民らに対して,使用料相当額の損害の支払を求めた裁判の最高裁判決となります。原審の高松高裁は,使用料の請求の一部を認めていました。
最高裁は「公水使用権は,公共用物である公水の上に存する権利であることに鑑み,その使用目的を満たすために必要な限度の流水を使用し得る権利にすぎないと解され,当該使用目的を満たすために必要な限度を超えて他人による流水の使用を排斥する権限を含むものではないというべきである。そうすると,被上告人は,本件水路に被上告人が河川法23条の許可に基づいてかんがいの目的で取水した水が流れていることから,その水について当該目的を満たすために必要な限度で排他的に使用する権利を有するとはいえるものの,直ちに第三者に対し本件水路への排水を禁止することができるとはいえない。」「したがって,本件水路に被上告人が河川法23条の許可に基づいて取水した水が流れていることから,被上告人が第三者に対し本件水路への排水を禁止することができるとし,上告人ら及び選定者Aの本件排水により本件水路の流水についての被上告人の排他的管理権が侵害されたとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある」と判断して,原判決を破棄して,使用料の請求を認めないという判断をしました。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88812%E3%80%80
許可に基づく権利だから第3者への排他性がまったく認められないのかというと,排他性が認められないと困るようなケースもありそうな気もするのですが,用水路は公的財産(市の財産)なので条例で使用料を決めるべき事案であるという趣旨の補足意見を読むと,結論としては妥当ではないかと思います。
弁護士吉野隆二郎
福岡市博多区博多駅前2-10-12-208