よしの法律事務所コラム

2020.11.27更新

市議会から科された23日間の出席停止の懲罰が違憲、違法であるとして、その取消しを求めた事案の判決となります。普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は一律に司法審査の対象とならないとした最高裁判決があったことから大法廷で審理されました。
判決では、議会による懲罰の手続きは法律(地方自治法)で定められていることから「法令の適用によって終局的に解決し得るもの」であることが前提とされました。そして「議員に対する懲罰は、会議体としての議会内の秩序を保持し、もってその運営を円滑にすることを目的として科されるものであり、その権能は上記の自律的な権能の一内容を構成する」ということが前提だとしても、出席停止の懲罰を受けた議員は「議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動をすることができず、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たすことができなくなる」という不利益となることから、「これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない」という解釈が示されました。
結論として「出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるものの、裁判所は、常にその適否を判断することができるというべきである」「普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるというべきである」と判断しました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89851
この最高裁判決によって、「議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否」が司法審査の対象、すなわち裁判所で争うことが可能となりました。しかし、「議会に一定の裁量が認められるべき」との判示もあるとおり、ある程度の裁量は裁判所も認めるのでしょうから、裁量を超えて違憲・違法になる場合がどのような場合なのかは今後の裁判例の集積に委ねられるように思います。
とはいえ、裁判所を利用する場面が増えるという点では、弁護士として知っておかなければならない判例かと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2020.11.09更新

中小企業等協同組合法に基づき設立された事業協同組合の役員選挙に関する判例となります。中小企業等協同組合法54条では,会社法831条1項1号が準用されており,最高裁は会社法の解釈と同様の考え方を示しました。
具体的には「事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えの係属中に,後行の選挙が行われ,新たに理事又は監事が選出された場合であっても,理事を選出する先行の選挙を取り消す旨の判決が確定したときは,先行の選挙は初めから無効であったものとみなされるのであるから,その選挙で選出された理事によって構成される理事会がした招集決定に基づき同理事会で選出された代表理事が招集した総会において行われた新たに理事又は監事を選出する後行の選挙は,いわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り,瑕疵があるものといわざるを得ない」「上記の取消しを求める訴えのような形成の訴えは,訴え提起後の事情の変化により取消しを求める実益がなくなって訴えの利益が消滅する場合があるものの,上記の取消しを求める訴えと併合された訴えにおいて,後行の選挙について上記の瑕疵が主張されている場合には,理事を選出する先行の選挙が取り消されるべきものであるか否かが後行の選挙の効力の先決問題となり,その判断をすることが不可欠であって,先行の選挙の取消しを求める実益があるというべきである」と述べたうえで「事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに,同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合には,上記特段の事情がない限り,先行の選挙の取消しを求める訴えの利益は消滅しないものと解するのが相当である」と訴えの利益を認めて,原判決を破棄して,事件を広島高裁に差し戻しました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89677
訴えの利益が消滅する特段の事由として「いわゆる全員出席総会においてされたなど」としか判示されていないため,それ以外にどのような場合に特段の事情が認められるのかについては,今後の判例の蓄積に委ねられることになりました。
役員選挙などの先行する決議などの有効性を争う場合に,その後の手続きへの対応も十分にしておく必要があるということを再認識させられる判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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