よしの法律事務所コラム

2021.04.15更新

遺言の有効性を争う事案の最高裁判決となります。
入院先の病院において、本件遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書までしたうえで、退院後に弁護士立ち会いの下に押印した遺言のようです。
原審は、形式的に、遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているから無効であると判断しました。
最高裁は「本件遺言が成立した日は、押印がされ」た日というべきであるが、「民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及び氏名の自書並びに押印を要するとした趣旨は、遺言者の真意を確保すること等にあるところ、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがある」として、「本件の事実関係の下では、本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではないというべきである」として、判決を破棄して、本件遺言のその余の無効事由について更に審理を尽くさせるために、原審に差し戻すこととしました。
「自筆証書によって遺言をするには,真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならない」という最高裁昭和52年4月19日判決に反するようにも思われますが、「遺言者の真意を確保する」ことが法の趣旨であれば,確かに、すべてが自署されていて、押印のみが後になった遺言を形式的に無効としていいのかと考えてみると、価値判断は難しいように思います。
いずれにせよ、事例判断でしょうが、遺言の有効性を考えるおいては、重要な判例になりそうです。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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