よしの法律事務所コラム

2016.12.19更新

厚木基地の自衛隊の航空機の運転の差止め等を求めた事案です。
「行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である」ということを前提に「自衛隊機の運航により生ずるおそれのある損害は、処分がされた後に取消訴訟等を提起することなどにより容易に救済を受けることができるものとはいえず、本件飛行場における自衛隊機の運航の内容、性質を勘案しても、第1審原告らの自衛隊機に関する主位的請求(運航差止請求)に係る訴えについては、上記の『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められる」と判断して、行政訴訟において争う方法については認めました。
しかし、「自衛隊が設置する飛行場における自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が、行政事件訴訟法37条の4第5項の差止めの要件である、行政庁がその処分をすることがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるか否かについては、同権限の行使が、上記のような防衛大臣の裁量権の行使としてされることを前提として、それが社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かという観点から審査を行うのが相当であり、その検討に当たっては、当該飛行場において継続してきた自衛隊機の運航やそれによる騒音被害等に係る事実関係を踏まえた上で、当該飛行場における自衛隊機の運航の目的等に照らした公共性や公益性の有無及び程度、上記の自衛隊機の運航による騒音により周辺住民に生ずる被害の性質及び程度、当該被害を軽減するための措置の有無や内容等を総合考慮すべきものと考えられる」という判断基準を示したうえで、「自衛隊機の運航には、高度の公共性、公益性がある」こと、自衛隊機の運行に一定の自主規制をしていること、これまでに予算を講じて防音対策をしてきたことなどを根拠に、防衛大臣の権限の行使が「その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに当たるということはできないと解するのが相当である」と判断しました。
行政訴訟として争う方法が認められたとしても、広い行政裁量が認められるのであれば、騒音に苦しむ住民の救済には結びつかないので、残念な判断と言うほかありません。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86315

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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