よしの法律事務所コラム

2025.02.07更新

有明海は、かつては「宝の海」と呼ばれ国内有数の漁場であったが、「有明海異変」と呼ばれた四半世紀前の環境悪化から再生を果たせないまま、採貝漁業は不漁が続き、漁船漁業においてはついに何も獲るものがないという程の状況に追い込まれている。国内生産量の半分を支えてきたノリ養殖においても、色落ち被害が広範囲にわたって毎年のように続き、国民の食生活に大きな影響を及ぼしている。漁業者の借金地獄、自己破産、廃業の話が絶えず、後継者難で展望が見えない状況の打開は一刻の猶予もない。
漁業は、造船、鉄工所、仲買流通、観光など多くの産業と関連して地域の経済基盤を支え、また特産種を食する独特の食文化を基盤とした地域文化を育んできたが、その根本が崩れ地域社会全体の崩壊を招いている。食糧安全保障の重要性が叫ばれる昨今、食卓を支える沿岸漁業は概ねどこも苦境にあるが、日本で唯一「国民的資産」と特措法で位置づけられている有明海の再生は国民的課題である。
ところが、政府の有明海再生の取り組みは極めて場当たり的である。20年以上にわたって行われ、総額1000億円を越える(諫早湾調整池水質改善事業を含む)再生事業では、何ら回復の兆しは見えてこないにもかかわらず、今また「諫早湾の非開門が前提の有明海再生加速化対策」として10年間で100億円を上乗せして交付し、これまでと同様な再生事業を目標もなく漫然と続ける方針が示された。有明海特措法に基づく漁業者救済も行おうとしない。
有明海を真に再生するためには、「諫早湾の非開門が前提」などとして多くの漁民が求めてきた「開門」をタブー視したりせず、開門も含めやれることは全てやるという立場から異変の根本に向き合う真摯な再生の取り組みが不可欠である。国民的課題であり緊急を要する有明海再生の取り組みに、特定の再生策をタブー視するような前提条件を付けている場合ではないのだ。
私たちは、有明海の極めて深刻な状況と再生の緊急性を広く呼びかけるとともに、政府・自治体・議会などに対して真の有明海再生を実現するよう強く行動していくことを、ここに宣言する。

2025年1月13日
有明海地域再生シンポジウム2025 参加者一同

投稿者: よしの法律事務所


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