よしの法律事務所コラム

2017.05.30更新

県立高校における武道大会の柔道競技において試合中に頭を打って頸髄損傷による両上肢機能障害及び両下肢体幹機能障害が残った事案です。
判決では「前年度の武道大会の柔道競技中に起きた2件の事故について、J高校内で事故の調査、原因分析や予防策を具体的に協議し、その結果を踏まえて安全指導対策を行い、大会のルールや環境を改善するなどした形跡がな」いことなどから、「生徒らに対し、本件大会に固有の内在的な危険性について実効的な指導ができていたものとは認めらないのであって、本件大会を実施するに相応しい十分な安全指導を含む適切な準備が大会前に整っていたとは認めることができないものというほかな」く「本件大会の開催を中止せず、例年に倣って漫然とこれを開催したこと」には「過失がある」と判断されました。
スポーツ指導者に対する研修の講師をした経験から、柔道事故の事例が多いことは知っていましたが、高校の武道大会でそのような重大な事故が発生していることは残念に思います。事故の原因分析や予防策の検討が重要なことを思い知らされる判例だと思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=86727

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2017.05.23更新

私のインタビュー記事が掲載されました。インタビューに来られた長嶺超輝さんは、「裁判官の爆笑お言葉集」など裁判官や弁護士に関する本を書かれているライターで、九州大学出身とのことでしたので、インタビューを引き受けました。長嶺さんの取材話を聞きたかったのですが、時間の制約上それはかなわなかったのが残念でした。

https://bengoshi-japan.com/interview/archives/1049

弁護士吉野隆二郎

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2017.05.15更新

平成29年5月29日(月)から、全国の登記所(法務局)において、各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まるようです。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html
相続人の誰かが戸籍謄本等を集めて一覧図を作成する必要があるのは、現状と変わらないようですが、一覧図が一度作成されると、その後は戸籍謄本等が不要になりそうだという観点からはメリットがあるようにも思います。また、料金が無料というのは意外です。この制度ができると、登記が促されることを期待しているのでしょうか。
いずれにせよ、新たな制度ですので、利用してみないと使い勝手は何とも言えないようには思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.05.09更新

諫早湾干拓事業によって設置された南北の排水門の開門(海水交換を行うこと)に関して、福岡高裁は、平成22年12月6日に開門を命じる判決を言い渡し、それは上告されずに確定しました。この判決(前提となる仮処分も含めて)は、その確定判決と矛盾する司法判断と言われています。
そもそも、この2つの判断は矛盾するものではありません。福岡高裁の確定判決は、国に対して3年間の猶予期間を与えました。それは、開門すると被害ができることを心配している農業者に対して、万全な被害対策を行わせるためでした。逆に言えば、国が被害対策のための工事を誠実に行っていれば、このような判断にはなりませんでした。
長崎地裁は判決において、開門したら甚大な被害が出ると述べています。しかし、その内容は、例えば、国が予算措置を講じていた3-2開門(調整池の水位を-1.2~-1mの間で管理する開門方法で、調整池の水位は開門しない状況と変わらない)については、①風速5メートル以上の強風が4日間程度継続する場合(平成1年から平成23年まででわずか6回しかない)に潮風害のおそれがあることや、②ブロッコリー栽培(4名)とアスパラガス(1名)にしみこみ塩害が生じるおそれがあることなど極めて限定された被害でしかありませんでした(この程度であれば、これまでの判例であれば、補償で済むと一蹴されておかしくありません)。
また、この裁判には、確定判決の当事者を含む漁業者らが補助参加人として手続に参加していました(私はその代理人の1人です)。そして、補助参加人として、開門による漁場環境改善効果を主張しましたが、国が国の主張と抵触する旨主張したことを根拠に、「被参加人の訴訟行為と抵触するため、本件訴訟において、その効力を有しないものである」と長崎地裁に判断され、確定判決の根拠となった漁業被害は判決の判断材料になりませんでした。
このように国が自ら負けたような内容であるにもかかわらず、農水大臣は控訴しないという方針を示し、実際に控訴手続を行いませんでした(別の漁業者が、独立当事者訴訟の参加申立をして、かつ、控訴手続を行ったため、審理はいずれにせよ福岡高裁に移ることとなります)。
これからも開門を目指して活動を続けていきます。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.05.01更新

小学4年生が校外学習として行われた健康施設の流水プールにおいける遊泳に参加した際にプール内でおぼれて亡くなったという事案のようです。
「被告らは, 担当教諭らがヘルストピアのプールにおける監視体制を万全にし, 児童の安全を図るべく十分に注視する義務を怠った過失があること、I校長が本件校外学習について事前対策を十分に検討し,校長として指導監督すべき義務を怠った過失があること,及び被告らに賠償責任があることをいずれも自認するところである」ことが争いのない事実として整理されており、県と市が賠償責任を負うこと自体については争いがなかったようです。
責任原因に争いがないのであれば、わざわざ訴訟にまでなる必要もなかった事案のように思いますが、判決をよく読むと、原告側は、教育委員会宛の報告書に事実と異なる記載があったことや、教育長が施設への責任を押し付けるような発言をしたことなどを問題にされていたようです。判決文だけなので、この内容からは何が真実かは分かりませんが、遺族の感情に配慮して、誠実に事実を報告していれば、裁判までには至らなかったようにも思います。そのような観点からも、考えさせられる判例です。

弁護士吉野隆二郎

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2017.04.27更新

「地方公務員災害補償法の遺族補償年金につき、死亡した職員の妻については、当該妻が一定の年齢に達していることは受給の要件とされていないにもかかわらず、死亡した職員の夫については、当該職員の死亡の当時、当該夫が一定の年齢に達していることを受給の要件とする旨を定めている同法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項の各規定が、憲法14条1項に違反する」として訴訟を提起した事件の最高裁判決です。
「地方公務員災害補償法の定める遺族補償年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格を有する制度というべきところ、その受給の要件を定める地方公務員災害補償法32条1項ただし書の規定は、妻以外の遺族について一定の年齢に達していることを受給の要件としているが、男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況に鑑み、妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは、上告人に対する不支給処分が行われた当時においても合理的な理由を欠くものということはできない」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86612
最高裁が、下線部を引いたような「社会的な状況」にあることを認定したことをどうとらえるべきなのでしょうか。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.04.20更新

昨日、「法曹人材確保の充実・強化の推進等を図るため,司法修習生に対し,修習給付金を支給する制度の創設等を行う必要がある」ということを目的とした改正裁判所法が成立しました。施行は、今年の11月1日からの予定で、今年に採用される司法修習生から適用できるようです。

http://www.moj.go.jp/content/001216651.pdf
2011年に修習生に対する給費制が廃止されて以降、法曹志望者が減るなどの制度を廃止した様々な弊害が指摘されていました。
今回の法律改正は、法曹関係者の1人として喜ばしいことだと思います。
福岡県弁護士会の会長声明も公表されています。

http://www.fben.jp/statement/dl_data/2017/0420.pdf

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.04.14更新

諫早干潟は、1997年4月14日に、潮受け堤防によって締切られました。(なお、用語としては、「閉め切り」ではなくて、「締切り」が正確なようです。なぜなら、国は裁判において、いわゆる「ギロチン」のことを、「潮受堤防排水門を閉じた状態で、一枚扉体293基を2系統に分けて連続落下させたこと」すなわち、「瞬時締切方式(一枚扉体角落とし)」と説明しています。この方式の正式名称が「瞬時締切方式」であることから、「締切り」と表記する方が用語としては正確なようです。)
それから、今年で20年になります。そして、国が確定判決を守らずに、開門しないという状況が3年以上も継続しています。
マスコミなどで様々な特集が組まれていますが、そもそも何が問題だったのか(大規模な干潟の破壊と、その影響と考えられる漁業被害の発生)に立ち返って、解決の道を探る必要があると思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.04.10更新

連帯保証をする趣旨で債務弁済契約公正証書(記載内容は貸金の形式)を作成していたケースにおいて、貸金として(民事訴訟法上の)支払督促を行って、仮執行宣言の申立までして確定した場合に、保証債務の履行請求の消滅時効が中断するかが争われた事案のようです。
最高裁は、「本件公正証書には、上告人が被上告人から1億1000万円を借り受けた旨が記載されているものの、本件公正証書は、上記の借受けを証するために作成されたのではなく、本件保証契約の締結の趣旨で作成されたというのである。しかるに、被上告人は、本件支払督促の申立てにおいて、本件保証契約に基づく保証債務の履行ではなく、本件公正証書に記載されたとおり上告人が被上告人から金員を借り受けたとして貸金の返還を求めたものである。上記の貸金返還請求権の根拠となる事実は、本件保証契約に基づく保証債務履行請求権の根拠となる事実と重なるものですらなく、むしろ、本件保証契約の成立を否定するものにほかならず、上記貸金返還請求権の行使は、本件保証契約に基づく保証債務履行請求権を行使することとは相容れないものである。そうすると、本件支払督促において貸金債権が行使されたことにより、これとは別個の権利である本件保証契約に基づく保証債務履行請求権についても行使されたことになると評価することはできない。したがって、本件支払督促は、上記保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。」と判断して、高裁の判決を破棄して、貸金の請求を認めませんでした。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86588
公正証書が裁判所を利用しない債務名義である問題点や、保証のつもりでいた当事者が貸金としての請求が来たときにどう対応していいのか分からなかった可能性があることなどを考えると、妥当な結論ではないかと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.04.03更新

高浜原発を差し止めた大津地裁の仮処分決定を「本件各原子力発電所の安全性が欠如していることの疎明があるとはいえない」として、取り消して差し止めを却下した決定です。
一般論としては「原子力発電所は、核燃料を使用し、その運転により人体に有害な多量の放射線物質を原子炉内に発生させる施設であり、ひとたび事故等が発生し、放射線物質が原子炉外に放出されると、周辺地域の住民の生命、身体及び健康等に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を長期間、広範囲にわたって汚染するおそれがある。そこで、このような深刻な被害の発生を防止するためには、重大な事故が万が一にも発生しないよう、原子力発電所の安全性を確保する必要がある。原子力発電所の事故による被害の深刻さと安全性確保の必要性は、福島第一原子力発電所事故を契機として、改めて強く認識されるに至ったものである」と福島第一原発の事故を契機として「前記のとおり、事故等を原因として放射線物質による深刻な被害が広範囲かつ長期間にわたって生じるおそれがあることを考慮すると、原子力発電所に求められる安全性の程度は、他の設備、機器等に比べて格段に高度なものでなければならないのであり、原子力発電所は、放射線物質による被害発生の危険性が社会通念上無視し得る程度にまで管理されていると認められる場合に、安全性が認められる施設として運転が許されると解するのが相当である」「原子力発電所の運転による原子力発電の利用は、上記の安全性を満たす限りにおいて許容されるものであって、原子力発電の有用性、必要性が高いか低いかによって、求められる安全性の程度が左右されるものではない」と高度な安全性が必要と考えているような判示をしています。
しかし、実際の判断では、規制基準に適合しているかしか考えておらず、住民に過大な立証を求めているとしか思えません。

http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/17-03-28/

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所


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