よしの法律事務所コラム

2017.04.10更新

連帯保証をする趣旨で債務弁済契約公正証書(記載内容は貸金の形式)を作成していたケースにおいて、貸金として(民事訴訟法上の)支払督促を行って、仮執行宣言の申立までして確定した場合に、保証債務の履行請求の消滅時効が中断するかが争われた事案のようです。
最高裁は、「本件公正証書には、上告人が被上告人から1億1000万円を借り受けた旨が記載されているものの、本件公正証書は、上記の借受けを証するために作成されたのではなく、本件保証契約の締結の趣旨で作成されたというのである。しかるに、被上告人は、本件支払督促の申立てにおいて、本件保証契約に基づく保証債務の履行ではなく、本件公正証書に記載されたとおり上告人が被上告人から金員を借り受けたとして貸金の返還を求めたものである。上記の貸金返還請求権の根拠となる事実は、本件保証契約に基づく保証債務履行請求権の根拠となる事実と重なるものですらなく、むしろ、本件保証契約の成立を否定するものにほかならず、上記貸金返還請求権の行使は、本件保証契約に基づく保証債務履行請求権を行使することとは相容れないものである。そうすると、本件支払督促において貸金債権が行使されたことにより、これとは別個の権利である本件保証契約に基づく保証債務履行請求権についても行使されたことになると評価することはできない。したがって、本件支払督促は、上記保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。」と判断して、高裁の判決を破棄して、貸金の請求を認めませんでした。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86588
公正証書が裁判所を利用しない債務名義である問題点や、保証のつもりでいた当事者が貸金としての請求が来たときにどう対応していいのか分からなかった可能性があることなどを考えると、妥当な結論ではないかと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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