よしの法律事務所コラム

2017.08.09更新

 平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、2017年8月11日(金)から8月15日(火)までお盆休みとさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2017.08.07更新

認定司法書士が、140万円を超える過払い請求の事件について、裁判外で締結した和解書の効力が争われた事案となります。
判決は「認定司法書士が委任者を代理して裁判外の和解契約を締結することが同条(弁護士法72条)に違反する場合であっても、当該和解契約は、その内容及び締結に至る経緯等に照らし、公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り、無効とはならないと解するのが相当である」と判断して、認定司法書士と依頼者との委任契約は無効と判断しながら、和解契約は無効とならない場合があることを認める判断をしました。
そして、「これを本件についてみると、前記事実関係等によれば、本件和解契約の内容は、本件取引に係る約330万円の過払金等について上告人(貸金業者)が200万円を支払うことにより紛争を解決するというものであり、その締結に至る経緯をみても、補助参加人は、A(依頼者)に対し、本件取引に係る過払金の額を説明し、Aの理解を得た上で、Aの意向に沿った内容の本件和解契約を締結したというのであって、上記特段の事情はうかがわれず、本件和解契約を無効ということはできない」と和解契約を無効とは判断しませんでした。
判決では「Aは、上告人に対して約330万円の過払金の返還請求ができること等を理解していたが、訴訟になる場合の負担等を考慮して、上告人から200万円の支払を受ける内容の和解をすることとした」と事実整理されていますが、貸金業者の資力によりますが、「訴訟になる場合の負担等を考慮して」も、計算上の過払い金額の60%ほどで和解するという不利益を十分に説明したのかについては疑問が残るように思います。
最高裁は「紛争が解決されたものと理解している当事者の利益」を重視したように思います。一方、最高裁は「弁護士法72条に違反して締結された委任契約は上記のとおり無効となると解されるから、当該認定司法書士は委任者から報酬を得ることもできないこととなる」とも判断していますので、認定司法書士が報酬を得ていれば、無効ということで取り戻せることにはなりそうです。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86944

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.07.24更新

少し前(7月1日)の朝日新聞に前原子力規制委員長代理の島崎邦彦さんのインタビューが掲載されていました。
「昨年の熊本地震で得られた新データで、揺れの予測でも計算式の問題が分かりました。いまの式を使った大飯原発の揺れの想定は過小評価で、別の式を使った方がよいと確信したのです。それで、裁判でも何ででも話さなければ、と決意したという経緯です」「言い続けないとうやむやになる。最たるものが東日本大震災でした。太平洋岸で大津波を発生させる地震が起きる可能性があるという政府の地震調査研究推進本部(地震本部)の02年の見解に携わったのに社会に広く伝えることができませんでした。そして1万8千人余りが犠牲になった。僕にも責任がある。『想定外』をもう起こさないようにすることが、僕にできることだと思っています」「事故直後は、あの事故を二度と起こしてはいかないとの思いを委員も職員も持っていた。それぞれ大変な経験をし、何かを抱えていましたから。大きな変化は審査過程の公開制を重視したことです。これで外から介入されにくく、独立性が保たれるようになりました」「もちろん、めげるときはありました。何度も名指しで批判記事を書かれたり、政治家が我々の判断を『科学的でない』と公言したり。そういうときは、被災した人の手記を読みました。一人ひとりが大変な思いをされている。それを読み『なにくそ』と」「規制委は、再稼働すべきかどうかを審査しているのではないのです。一定規模以上の事故が1基あたり100万年に1回程度を超えないようにする安全目標を掲げ、それぞれの原発が規制基準を満たしているのかどうかを審査しているだけです。世界最高水準の規制基準という言葉が独り歩きしていますが、単に日本が地震国、火山国だから、その分、安全基準が厳しい、というくらいの話なのです。事故が起きないわけではありません」などと述べられていました。

http://www.asahi.com/articles/DA3S13013142.html
昨年の熊本地震、そして、全国のいたるところで地震が発生していることから、原発を本当に動かし続けていいのかを再検討すべき時期にきているように思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.07.18更新

医師の残業代の未払いが争われた事案の最高裁判決となります。判決は「労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは,使用者に割増賃金を支払わせることによって,時間外労働等を抑制し,もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに,労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される」ことや「使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには,割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として,労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ,同条の上記趣旨によれば,割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては,上記の検討の前提として,労働契約における基本給等の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要」であることを前提に、本件では「通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない」ことから、「被上告人の上告人に対する年俸の支払により,上告人の時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない」と判断して、原判決を破棄して、「被上告人が,上告人に対し,通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金を全て支払ったか否か,付加金の支払を命ずることの適否及びその額等について更に審理を尽くさせるため」東京高裁に差し戻すという判断を示しました。
本件は、「時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金について,年俸1700万円に含まれることが合意されていた」ようですが、「上記年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかった」事案のようです。
労働基準法37条の「時間外労働の抑制」という観点からすると、医師の長時間労働を抑制するためには、必要な判断であったように思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86897

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.07.11更新

福岡県弁護士会が主催する九州北部豪雨で被災された方に対する無料電話相談が本日から始まりました。昨年の熊本地震の際にも無料電話相談の担当をいたしましたが、その際に無料電話相談の必要性も感じましたので、被災された方への少しでもお役に立てればと思っていたところ、たまたま、私は本日の初日に担当になりました。被災直後ということもあり、それほど電話はかかってきませんでしたが、何名かの被災者に対して多少の法的助言をさせていただきました。
今後もこの相談に協力して、被災者の方に少しでもお役に立てればと思っているところです。

http://www.fben.jp/whatsnew/2017/07/post_478.html

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.07.06更新

強制執行認諾文言のある公正証書で養育費の支払いが定められているケースで、すでに支払期限が到来しているものについて未払いの養育費がある場合に、支払期限が到来していない養育費を請求の根拠とする債権(被保全債権)として、養育費を支払わない相手方が所有する不動産の仮差押えが認められるかが争われた珍しいケースの最高裁の決定になります。
原審の東京高裁は、「本件においては、債務名義が存在する被保全権利につき、なお民事保全制度を利用し権利保護を図る特別の必要性は認められない」と判示して、仮差押えを却下した東京地裁立川支部の決定の結論を支持して抗告を棄却しました。最高裁は「本件事実関係の下においては、所論の点に関する原審の判断は是認することができる」と判断して、東京高裁の結論を支持しました。
この結論に対しては、2名の裁判官の反対意見があり、給料その他の継続的給付に係る債権に対しては期限未到来のものについても差押えが可能かこととのバランスや、現時点では対象不動産には住宅ローンがあるため余剰がないが将来的には余剰が生じる可能性が否定できないことなどから権利保護の利益を否定できないという指摘がなされています。
一般論として、強制執行認諾文言のある公正証書があれば別途判決を取得する必要はなく、強制執行が可能なのですから、仮差押さえする必要はないと思いますが、この事案で仮差押えを認めなかった判断については、評価も分かれるのだろうなと思いました。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.06.27更新

JR西日本の元代表取締役らに対して、脱線事故の刑事責任が認められるかが争われた刑事事件の最高裁の決定となります。「本件事故以前の法令上、ATSに速度照査機能を備えることも、曲線にATSを整備することも義務付けられて」いなかったこと、「JR西日本の職掌上、曲線へのATS整備は、線路の安全対策に関する事項を所管する鉄道本部長の判断に委ねられており、被告人ら代表取締役においてかかる判断の前提となる個別の曲線の危険性に関する情報に接する機会は乏しかった」ことなどを根拠に「被告人らが、管内に2000か所以上も存在する同種曲線の中から、特に本件曲線を脱線転覆事故発生の危険性が高い曲線として認識できたとは認められない」と判断して、過失を認めませんでした。
列車運行に関する事故に対して、民事責任だけでなく、刑事責任まで問えるのかという観点からすると、やむを得ない結論なのかなという気がします。しかし、指定弁護士が起訴をした前提が、「曲線の半径を600mから304m」「制限時速が従前の95kmから70km」変更され、その結果「通勤時間帯の快速列車の本件曲線における転覆限界速度は時速105kmから110km程度に低減し、本件曲線手前の直線部分の制限時速120kmを下回るに至」っていたことや、「運行開始に伴うダイヤ改正により、1日当たりの快速列車の本数が大幅に増加し」たことからは、本当に事故の危険性の増加が予見できなかったのだろうか、という点にはやや疑問が残るように思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86834

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.06.20更新

玄海原子力発電所の3号機及び4号機の差し止めを求めた仮処分を却下した決定です。決定では、原子力の規制に関して「とりわけ、福島第一原発事故の深い反省に立ち、その教訓をいかしてそのような事故を二度と起こさないようにするとともに、我が国の原子力の安全に関する行政に対する損なわれた信頼を回復し、当該行政の機能の強化を図るため」に行った改正であり、「このような本件改正後の原子炉等規制法における規制の目的及び趣旨からすれば、改正原子炉等規制法は、最新の科学的、技術的知見を踏まえた合理的に予測される規模の自然災害を想定した発電用原子炉施設の安全性の確保を求めるものと解されるのであって、改正原子炉等規制法の規制の在り方には、我が国の自然災害に対する発電用原子炉施設等の安全性についての社会通念が反映しているというべきである」と判断しています。
しかし、原子力規制委員会の田中俊一委員長は記者会見において、規制の数値目標に関して「もちろん数値目標は大事ですけれども、そのことで、では国民が納得しているかというと、必ずしもそれはそうではないので、そこのところは、安全目標というのは決して国民と我々が合意して作った値ではないということだけは御理解いただかないといけないと思うのです」と目標値が国民の合意によってできたものでないという発言をされています。また、原子力規制委員会の基準を充たせば安全なのかという質問に対して「安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということです。ですから、これも再三お答えしていますけれども、基準の適合性は見ていますけれども、安全だということは私は申し上げませんということをいつも、国会でも何でも、何回も答えてきたところです」と基準に適合しても安全を担保するものでもないという発言もされています。
そうであるにもかかわらず、裁判所が規制基準について「安全性についての社会通年が反映されている」と判断することには違和感を覚えます。
また、配管の安全性に関して「あえて炉心を損傷させるような評価条件を定めて評価しても、福島第一原発事故後新たに設置した設備が機能し、原子炉格納容器が破損するには至らないことが確認されているのであり、仮に、炉心溶融が生じたとしても、そのことから直ちに原子炉容器及び原子炉格納容器が破損するおそれがあるとも認め難い」という判断は、安全神話の復活を思わせるもので、それで本当に安全なのかの疑念はぬぐえません。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=86841

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.06.13更新

「公害の根絶と平和を求めて」を合言葉に1976年から6月の環境週間に毎年行われ、今年で42回目となる総行動に参加してきました。6月7日から8日にかけて、環境大臣交渉や一斉の官庁交渉などが行われ、私は有明弁護団として農水省交渉に参加しました。現在の最大の課題は、東京電力による原発被害者の問題であること、そして、被害者は救済されていないことも実感できました。

http://www.jnep.jp/kogai-sokodo/index.html

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.06.06更新

GPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査の適法性が争われて大きく報道された判決となります。
最高裁は、「憲法35条は、『住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利』を規定しているところ、この規定の保障対象には、『住居、書類及び所持品』に限らずこれらに準ずる私的領域に『侵入』されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である」と判断しました。すなわち、憲法35条には「私的領域に侵入されることのない権利も含まれる」ということを最高裁が認めました。
そして、それを前提に、「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴法上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たるとともに、一般的には、現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから、令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである」と判断しました。
結論としては、別の証拠から有罪が認定できるということで、上告は棄却されましたが、GPS捜査に令状を必要とした判断は、十分な意義があるように思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86600

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所


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