よしの法律事務所コラム

2017.03.13更新

タクシーの運転手の賃金の請求に関する事案です。歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則における定めがある事案で、その賃金規則の有効性が争われたようです。
労働基準法37条は、「労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり、使用者に対し、労働契約における割増賃金の定めを労働基準法37条等に定められた算定方法と同一のものとし、これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない」ことを前提に、「他方において、労働基準法37条は、労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定をしていないことに鑑みると、労働契約において売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に、当該定めに基づく割増賃金の支払が同条の定める割増賃金の支払といえるか否かは問題となり得るものの、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできないというべきである」として当該賃金規則の定めが公序良俗に反して無効であるという主張を否定しました。
そして、「本件賃金規則における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否か、また、そのような判別をすることができる場合に、本件賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断」すべきとして、原判決を破棄して東京高裁に差し戻すという判断を示しました。
労働者の立場からすると、歩合制があるのに、割増賃金分が差し引かれるというのはバランスが悪いように思われます。差戻審が、どのように整理するかも注目されます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86544

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


SEARCH


ARCHIVE


CATEGORY