よしの法律事務所コラム

2016.09.05更新

最高裁平成22年6月4日判決は,自動車の売買に際し,販売会社,信販会社及び購入者の三者間で,購入者が販売会社から自動車を買い受けるとともに,その売買代金を自己に代わって販売会社に立替払いすることを信販会社に委託すること,当該自動車の所有権が購入者に対する債権の担保として留保されること,及び,登録所有名義のいかんを問わず,販売会社に留保されている当該自動車の所有権が立替払いにより信販会社に移転し,購入者が立替金等債務を完済するまで信販会社に留保されること等を内容とする契約を締結したという事案につき,信販会社の取得する留保所有権の被担保債権(立替金等債権)が,販売会社の有していた留保所有権の被担保債権(売買代金債権)とは異なることから,信販会社が購入者との間で独自の留保所有権を設定したと評価すべきことを理由に,信販会社の留保所有権の取得につき,立替払の結果,販売会社が留保していた所有権が代位により信販会社に移転するという構成を否定し,信販会社が独自の留保所有権を行使するためには,信販会社の登録所有名義が必要であると判断したものである。
この判例が出てからは、信販会社に登録名義がない場合に、三者間の合意を前庭に信販会社が引き揚げた場合には、偏頗的な代物弁済として、否認権対象行為にあたるというという考え方も有力になっているところです。
この判決は、「自動車の割賦販売において,購入者の委託により,販売会社に対し割賦金債務の連帯保証をした信販会社が,購入者に代わって弁済したときには,法定代位により割賦金債権及び販売会社に留保された自動車の所有権を取得することが合意された事案において,信販会社が,保証債務の履行として,販売会社に割賦金債務 の弁済をした後に,購入者について破産手続が開始された場合,信販会社は,破産手続開始の時点で自動車の所有登録名義を得ていなくても,破産管財人に対し,別除権の行使として,留保所有権に基づく自動車の引渡しを求めることができる」と判断しました。この判決は、信販会社が連帯保証をしており、法定代位を根拠とすることなどから、自動車の引き渡しを認めました。
このように細かいところで判断が分かれると、倒産手続きの際に自動車の引き揚げにどう対応したらいいか、悩みが増えるばかりです。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85940

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2016.08.25更新

婚姻費用の支払い義務者(夫)が、申立人(妻)が居住していた自宅の住宅ローンを支払っていた場合(二重払いのケース)に婚姻費用をどのように定めるのかという点に関する審判です。
審判では「標準的算定表は、別居中の権利者世帯と義務者世帯が、統計的数値に照らして標準的な住居費をそれぞれ負担していることを前提として標準的な婚姻費用分担金の額を算定するという考え方に基づいている。しかるところ、義務者である相手方は、上記認定のとおり、平成26年×月まで、権利者である申立人が居住する自宅に係る住宅ローンを全額負担しており、相手方が権利者世帯の住居費をも二重に負担していた。従って、当事者の公平を図るためには、平成26年×月までの婚姻費用分担金を定めるに当たっては、上記の算定額から、権利者である申立人の総収入に対応する標準的な住居関係費を控除するのが相当である」と判断されています。
このケースのように、住宅ローンと家賃の二重払いになるような場合には、住宅ローンの支払額を算定表にあてはめる義務者の年収から差し引くとか、住宅ローンの支払額を特別経費として基礎収入率を定めるとか、住宅ローンの支払額の一定の割合を算定表による算定結果から控除するなど様々な考え方がありますが、この論点を検討する際に参考になると考え方だと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2016.08.19更新

養育費に関する決定で、大学の学費を請求した事案になります。実際には私立大学に進学したケースのようですが、公立高校の一般的な学費と大学の一般的な学費とを比較して、超過する大学の学費部分に関して、どのような負担をすべきかを検討しています。そして、両親の収入を前提に、仮に離婚していなかったとしても、両親の収入で学費をすべてまかなうことは困難であって本人が奨学金を受け、あるいは、アルバイトをするなどして学費の一部を負担しなければならないような状況であったと認定したうえで、超過額の3分の1に相当する額の負担するのが相当と判断しています。
また、大学の進学を認めていたことを前提に満22才までの養育費が認められています。
大学に進学した場合の養育費を考えるに際して、参考になる1つの決定だと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2016.08.10更新

福島第一原子力発電所の事故があった直後には、夏に電気が不足するというような話題がありましたが、最近は、ほとんど話題にもなっていないように思います。国の総合資源エネルギー調査会:基本政策分科会:電力需給検証小委員会において、「2016年度夏季の電力需給見通しについて」検討がなされたようですが、九州電力管内では、14.1%の予備率があるようで、安定的な電力供給に望ましいとされる7~8%の予備率は十分に確保できているようです。それほど余裕があるので、毎日のように猛暑が続いても、電力不足というような言葉がニュースにならないのでしょう。太陽光発電の普及により、「点灯帯供給力」という言葉も生まれているようです。新電力がメガソーラーを多く持っているからでしょうが、太陽光の出力が低下した時間帯の方が、需給状況が厳しくなるようです。
ところで、九州電力の予備率に相当する電力は221万キロワットで、川内原発の発電量の178万キロワットを上回ります。もう少し別の電力供給源を増やせば、川内原発を動かす必要はないのにと思うところです。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2016.08.02更新

民事再生法の手続き中の会社に関する判例です。新聞報道によれば、リーマン・ブラザース証券会社が、野村信託銀行に対して清算金を請求したところ、関連会社の野村証券の債権と相殺するということで支払いを拒んでいたという事案のようです。
判決は、「再生債務者に対して債務を負担する者が,当該債務に係る債権を受働債権とし,自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は,これをすることができる旨の合意があらかじめされていた場合であっても,民事再生法92条1項によりすることができる相殺に該当しないものと解するのが相当である。」と判示しています。民事再生手続きにおいて、債権者を平等に取り扱うためには、「関係会社」の債権まで相殺可能だというのは、広すぎるような感じがしますので、結論としては妥当なものだと考えます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85999

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2016.07.25更新

報道によれば、ジュピターテレコム株式会社(ケーブルテレビのJ-COM)を完全子会社化するための手続きに関する決定のようです。
「多数株主が株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど多数株主等と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ,公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われ,その後に当該株式会社が上記買付け等の価格と同額で全部取得条項付種類株式を取得した場合には,上記取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り,裁判所は,上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当である。」と判断しました。
独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられるなどの手続き保障がなされたと裁判所が判断した場合には、少数株主が価格に対する不服を述べることは難しいということを示した決定です。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85989

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2016.07.15更新

3月9日に高浜原発の運転の差し止めを命じた仮処分の保全異議審の決定です。
大津地裁は、高浜原発の運転の再開を認めませんでした。
理由を見ると、関西電力は、新規性基準の合理的であること及びその基準に適合していることについて、主張立証する必要がないかのような主張をしているようで、その点につき裁判所は「しかしながら,このような債務者の主張は,原子力規制委員会が設置された経緯及び原子力制委員会設置法1条所定の趣旨に照らし,採用できない。新規制基準は,福島第一原子力発電所の重大な事故に起因して,確立された国際的な基準を踏まえて施策を策定するとの同条の趣旨に基づいて制定された規制であり,この規制を利用せずして,原子力発電所の設置者ないし運転者が直接安全性を主張及び疎明できるとする根拠は,見当たらず,新規制基準が合理的であること及びこの基準に適合していることについても,主張及び疎明すべきである。」と判断しています。
また、関西電力は、「本件各原発に具体的にどのような欠陥があり,その欠陥に起因して,どのような機序で放射性物質の異常放出等の事故が発生し,これによって債権者らのそれぞれの人格権を侵害するに至るのかが明らかにされない限り,具体的危険性があるとはいえない」とも主張しているようですが、これに対しても裁判所は「しかしながら,原子力規制委員会設置法1条は,我が国の原子力行政の根本的な視点として,原子力利用における事故の発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立つことを明らかにしていること,事業者である債務者において安全性に欠ける点のないことの立証を尽くさなければ,本仲各原発の安全性に欠ける点のあることが推認されるといえること,現実に起こってしまった福島第一原子力発電所事故とそれによる甚大な被害を目の当たりにした国民にとっての社会通念は,原発の安全性の欠如から人格権の侵害は直ちに推認されるものとなっているといえることからすると,この点の債務者の主張も採用することはできない。」と判断しています。
福島第一原子力発電所の事故がなかったかのような関西電力の主張を認めなかった決定は、社会通念にかなうものではないかと思います。

http://www.nonukesshiga.jp/20160712.html

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2016.07.11更新

会社の飲み会後に交通事故にあった事案で労災が認められたことから話題となった判例です。
「以上の諸事情を総合すれば,Bは,本件会社により,その事業活動に密接に関連するものである本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ,本件工場における自己の業務を一時中断してこれに途中参加することになり,本件歓送迎会の終了後に当該業務を再開するため本件車両を運転して本件工場に戻るに当たり,併せてE部長に代わり本件研修生らを本件アパートまで送っていた際に本件事故に遭ったものということができるから,本件歓送迎会が事業場外で開催され,アルコール飲料も供されたものであり,本件研修生らを本件アパートまで送ることがE部長らの明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれないこと等を考慮しても,Bは,本件事故の際,なお本件会社の支配下にあったというべきである。また,本件事故によるBの死亡と上記の運転行為との間に相当因果関係の存在を肯定することができることも明らかである。」と判示して、業務上の事由による災害に当たると認定しました。
上司からの強い要請があったこと、終了後には会社に戻って仕事をすることが予定されていたこと、懇親会の目的は中国人研修生との親睦を図ることで会社が全額を負担していたことなどが労災を認める判断の要素となっており、例外的に労災と認めてもらうためには、丁寧な事実調査が必要だと感じました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86000

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2015.12.10更新

自筆による遺言書において、文章自体は内容が分かる状態で、その文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで1本の斜線が引かれていたという事案において、最高裁判所は、「本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は、民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するというべきであり、これによりAは本件遺言を撤回したものとみなされることになる。したがって、本件遺言は、効力を有しない」と判断しました。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85488
遺言書は作成者が亡くなった後にその効力が争われるものですから、その効力については、できるだけ形式面で判断するということになるのでしょう。
遺言書を作成する場合には、公正証書遺言などで形式をしっかり整えておくことが重要だと再認識させられる判例です。

弁護士吉野隆二郎

投稿者: よしの法律事務所

2015.12.04更新

昨年10月1日に福岡市博多区で独立開業し、やっと、ホームページを作成することができました。

これからよろしくお願いいたします。

 

弁護士 吉野隆二郎

〒812-0011 福岡市博多区博多駅前2丁目10-12
ハイラーク博多駅前208号
よしの法律事務所
℡ 092-260-9427 FAX 092-260-9428

投稿者: よしの法律事務所


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