よしの法律事務所コラム

2016.07.15更新

3月9日に高浜原発の運転の差し止めを命じた仮処分の保全異議審の決定です。
大津地裁は、高浜原発の運転の再開を認めませんでした。
理由を見ると、関西電力は、新規性基準の合理的であること及びその基準に適合していることについて、主張立証する必要がないかのような主張をしているようで、その点につき裁判所は「しかしながら,このような債務者の主張は,原子力規制委員会が設置された経緯及び原子力制委員会設置法1条所定の趣旨に照らし,採用できない。新規制基準は,福島第一原子力発電所の重大な事故に起因して,確立された国際的な基準を踏まえて施策を策定するとの同条の趣旨に基づいて制定された規制であり,この規制を利用せずして,原子力発電所の設置者ないし運転者が直接安全性を主張及び疎明できるとする根拠は,見当たらず,新規制基準が合理的であること及びこの基準に適合していることについても,主張及び疎明すべきである。」と判断しています。
また、関西電力は、「本件各原発に具体的にどのような欠陥があり,その欠陥に起因して,どのような機序で放射性物質の異常放出等の事故が発生し,これによって債権者らのそれぞれの人格権を侵害するに至るのかが明らかにされない限り,具体的危険性があるとはいえない」とも主張しているようですが、これに対しても裁判所は「しかしながら,原子力規制委員会設置法1条は,我が国の原子力行政の根本的な視点として,原子力利用における事故の発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立つことを明らかにしていること,事業者である債務者において安全性に欠ける点のないことの立証を尽くさなければ,本仲各原発の安全性に欠ける点のあることが推認されるといえること,現実に起こってしまった福島第一原子力発電所事故とそれによる甚大な被害を目の当たりにした国民にとっての社会通念は,原発の安全性の欠如から人格権の侵害は直ちに推認されるものとなっているといえることからすると,この点の債務者の主張も採用することはできない。」と判断しています。
福島第一原子力発電所の事故がなかったかのような関西電力の主張を認めなかった決定は、社会通念にかなうものではないかと思います。

http://www.nonukesshiga.jp/20160712.html

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


SEARCH


ARCHIVE


CATEGORY