よしの法律事務所コラム

2020.07.06更新

東京電力の福島第一原発の事故によって九州へ避難されてきた方々が、国と東京電力に対して、損害賠償を求めた裁判の判決となります。
判決は国の責任について以下のように判断して国の責任を否定しました。
「原子力発電所において事故が発生した場合には,その従業員や周辺住民等の生命,身体に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすことになり,その被害は極めて重大である。また,一般市民である原告ら自身が,原子力発電所の事故の発生を直接防止することは不可能である。したがって,経済産業大臣には,万が一にもそのような事故が発生することのないよう,その専門技術的裁量の下で,適時かつ適切に技術基準適合命令等の規制権限を行使することが期待されていたというべきである。そして,経済産業大臣は,被告東電等に対して長期評価の見解を基礎として試算することを指示するなどすれば,平成14年末頃には福島第一原発の敷地高さ(0,P.+10m)を超える本件想定津波の到来を予見することが可能であった。                      
しかし,本件事故発生前の時点では,長期評価の見解は,関係団体や専門家からおおむね消極的ないし懐疑的に見られており,理学的に否定することができないという以上の積極的な評価をすることは困難で,信頼性の高いものとは評価されていなかったのであり,また,長期評価の見解で示された発生確率からしても,福島第一原発の敷地高さを超える津波が到来する切迫した危険性があると認識することは困難であった。さらに,経済産業大臣において予見し得たのは本件想定津波であるところ,本件想定津波と本件津波とでは規模や到来の方向等に大きな違いがあることから,防潮堤等の設置や建屋等の水密化などの措置により本件事故の発生を回避することができた可能性は低いといわざるを得ない。このような予見可能性や結果回避可能性の程度に加え,被告国(保安院)が津波の安全対策について一定の対応を行っていたことや,平成19年に新潟県中越沖地震が発生し,その後は地震動についての安全対策が急務とされていたことも考慮すると,被告国が,平成18年5月には福島第一原発の津波被害(外部溢水)に対する脆弱性を具体的に認識していたことを考慮してもなお,経済産業大臣が,電気事業法39号に基づく省令62号の改正権限ないし同法40条に基づく技術基準適合命令権限を行使し,被告東電に対して建屋等の水密化などの措置を採るよう義務付けなかったことが,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められない。
したがって,本件主張に係る経済産業大臣の規制権限の不行使は,国賠法上違法であるとは認められない。」
私にはこのような結論には疑問を感じます。「万が一にも」原子力発電所の事故を発生させないためには、「福島第一原発の敷地高さを超える津波が到来する」確率が低かったとしても、その可能性を予見できていた以上は、必要な対策を講じさせる必要はあったのではないでしょうか。「平成19年に新潟県中越沖地震が発生し,その後は地震動についての安全対策が急務とされていたこと」や「平成18年5月には福島第一原発の津波被害(外部溢水)に対する脆弱性を具体的に認識していたこと」が認められるのであれば、早急に対策を講じさせるべきではなかったのでしょうか。確率が低いことを強調すれば、危険性が切迫していないという結論になるのでしょうが、原子力発電所については「万が一にも」事故を発生させてはいけないという観点からは、「敷地高さ(0,P.+10m)を超える本件想定津波の到来を予見することが可能」であったのであれば、そのような津波の危険性を回避する対策を講じさせる必要があったのではないでしょうか。
今回の原子力発電所の事故による被害の大きさを十分に理解していたのであれば、別の結論になったのではないか思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2020.07.01更新

交通事故に関して,被用者が使用者に求償することの可否が争点になった判例になります。
最高裁は「民法715条1項が規定する使用者責任は,使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや,自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し,損害の公平な分担という見地から,その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである。このような使用者責任の趣旨からすれば,使用者は,その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず,被用者との関係においても,損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである」ことや「使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には,使用者は,その事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において,被用者に対して求償することができると解すべきところ,上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで,使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない」ことなどを根拠に「被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,上記諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができるものと解すべきである」と判断して,求償を認めなかった判決を破棄して大阪高裁へ差し戻しました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89270
本件は,使用者が,貨物運送を業とする資本金300億円以上の株式会社であり,全国に多数の営業所を有しているにもかかわらず,その事業に使用する車両全てについて自動車保険契約等を締結していなかったのに対し,被用者が自らで損害賠償訴訟の応訴の負担を負い合計で2800万円以上の賠償金を支払っていたという事案であることからも,最高裁の判断は妥当なものと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2020.06.02更新

離婚調停成立後に,離婚調停成立以前の婚姻費用の分担請求が認められるかが争点となった判例です。
最高裁は「婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかである。しかし,上記の場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから,夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当である。このことは,当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても,異なるものではない」ということを理由として,「婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない」と判断して原決定を破棄して札幌高裁に差し戻しました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89187
離婚が成立したことと,離婚以前の婚姻費用の負担の問題とは確かに別次元のものなので、妥当な結論の決定ではないかと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2020.05.18更新

平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。

福岡県は緊急事態宣言を解除されましたが、時差出勤等の取組を継続する必要がありますことから、当分の間、当事務所の受付時間を10:00~17:00に短縮することを継続いたします。

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2020.04.08更新

平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。

福岡県が緊急事態宣言の対象区域に指定されたことをふまえて、本日より、当事務所の受付時間を10:00~17:00に短縮いたします。

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2020.03.31更新

本日3月31日をもって、福岡県弁護士会の副会長の任期を終了いたします。
1年間貴重な経験をさせていただきました。
4月からは、定期的にブログを更新していくようにがんばります。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2019.12.20更新

 平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、2019年12月28日(土)から2020年1月5日(日)まで年末年始休業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2019.10.29更新

請求異議訴訟で最高裁まで争いになった事案になります。
貸金債権に基づく公正証書によって、債務者の貯金(ゆうちょ銀行)に差し押さえがなされましたが、その差し押さえが存在することによって、時効中断の効力があったのかが争点となったようです。具体的には、民法第155条には「差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない」と定められています。この条文の解釈が争いになりました。
最高裁は「民法155条は、差押え等による時効中断の効力が中断行為の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶとした同法148条の原則を修正して差押え等による時効中断の効力を当該中断行為の当事者及びその承継人以外で時効の利益を受ける者に及ぼす場合において、その者が不測の不利益を被ることのないよう、その者に対する通知を要することとした規定であると解され(最高裁昭和47年(オ)第723号同50年11月21日第二小法廷判決・民集29巻10号1537頁参照)、差押え等による時効中断の効力を当該中断行為の当事者又はその承継人に生じさせるために、その者が当該差押え等を了知し得る状態に置かれることを要するとする趣旨のものであると解することはできない。しかるところ、債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断において、その債務者は、中断行為の当事者にほかならない。したがって、上記中断の効力が生ずるためには、その債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要しないと解するのが相当である」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88922
差し押さえがなされていることを、債務者が知らなくても、時効は中断するということなので、一見、債務者に酷なようにも思えますが、逆に、債務者が所在をわからないようにしている場合に、債務者が通知を受け取っていないと時効が中断しないということの方が逃げ得を認めることになってしまいますので、その両者のバランスを考えると妥当な判断だと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2019.09.17更新

7月26日に弁論が開かれた諫早湾干拓事業に関する事案の判決となります。
結論として、原判決が破棄され、福岡高裁に差し戻しとなりました。
判決は「本件各確定判決は、平成20年6月及び平成22年12月にされたものであり、かつ、その既判力に係る判断が包含されることとなる主文は要旨『判決確定の日から3年を経過する日までに開門し、以後5年間にわたって開門を継続せよ』というものであるから、本件各漁業権1の存続期間の末日である平成25年8月31日を経過した後に本件各確定判決に基づく開門が継続されることをも命じていたことが明らかである」と判決の文言解釈から当然の判断をしました。
その一方で「本件各確定判決が、飽くまでも将来予測に基づくものであり、開門の時期に判決確定の日から3年という猶予期間を設けた上、開門期間を5年間に限って請求を認容するという特殊な主文を採った暫定的な性格を有する債務名義であること、前訴の口頭弁論終結日から既に長期間が経過していることなどを踏まえ、前訴の口頭弁論終結後の事情の変動により、本件各確定判決に基づく強制執行が権利の濫用となるかなど、本件各確定判決についての他の異議の事由の有無について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする」とも述べています。
しかし、「前訴の口頭弁論終結日から既に長期間が経過していること」を判断要素に入れるべきだとも読めるこの内容には違和感があります。国が確定判決を守らないためにこれまで時間をかけてきたことを、どうして裁判所が正当化しなければならないのでしょうか。国が確定判決を守らないことを裁判所が認めるのであれば、誰も裁判所など信用しなくなります。差戻審でも司法の本質が問われることになるようです。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88916

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2019.08.07更新

 平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、2019年8月10日(土)から8月15日(木)までお盆休みとさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

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