よしの法律事務所コラム

2020.12.10更新

福井県にある大飯原子力発電所の3号機及び4号機について,設置変更を許可した原子力規制委員会の処分(本件処分)の取消を求めた行政訴訟の判決となります。
いわゆる原発の新規制基準における基準地震動の策定に関しては「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(地震動審査ガイド)において「震源モデルの長さ又は面積,あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には,経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。」と定められています。
大阪地裁は「平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けて耐震設計審査指針等が改訂される過程において,委員から,経験式より大きな地震が発生することを想定すべきであるとの指摘を受けて,本件ばらつき条項の第2文に相当する定めが置かれるに至った経緯」から「経験式が有するばらつきを検証して,経験式によって算出される平均値に何らかの上乗せをする必要があるか否かを検討した結果,その必要がないといえる場合には,経験式によって算出される平均値をもってそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値とすることも妨げられないものと解される」などという趣旨の定めであると解釈しました。
そして,そのような解釈を前提に,参加人(関西電力)が「実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かということ自体を検討しておらず,現に,そのような設定(上乗せ)をしなかった」にもかかわらず,原子力規制委員会が「経験式が有するばらつきを考慮した場合,これに基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく,本件申請が設置許可基準規則4条3項に適合し,地震動審査ガイドを踏まえているとした」原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には,看過し難い過誤,欠落がある」として判断過程を違法と認定して,本件処分を取消すという判断をしました。
東日本大震災をふまえると、想定する地震の規模に余裕を持たせるべきだという考え方は理解できるところで、その点が不十分だったということであれば、裁判がこのような結論になってもやむを得ないのではないかと思います。
判決全文が原告側のホームページに掲載されています。

http://www.jca.apc.org/mihama/ooisaiban/hanketu20201204.htm

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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