よしの法律事務所コラム

2021.02.25更新

東京電力の福島第一原発の事故に関して、全国で30ほどの集団訴訟が係争中ですが、国と東京電力を被告とする高裁の判決としては3番目に出されたものになります。
東京高裁は「科学的知見の採否は規制機関の専門的判断に委ねられているが、原子炉施設についての規制権限の目的が、ひとたび事故等により放射性物質の大量放出という事態が発生すれば、極めて深刻な被害を広範囲かつ長期間にわたってもたらす危険性がある原子炉施設について、万全の安全対策を確保することにあることに鑑みれば、規制機関がある科学的知見を基礎として規制権限の行使の要件について判断してきたが、新たな知見が示された場合において、その新たな知見にそれまで判断の基礎としてきた知見と少なくとも同程度の科学的信頼性があると評価することができるようなときは、規制機関が、当該新たな知見を判断の基礎としないとすることは著しく合理性を欠くことになるというべきである。」「規制機関としては、長期評価に示された知見を基礎として福島第一原発に到来する可能性のある津波を評価すべきであったのであり、それによって福島第一原発が津波による損傷を受けるおそれがあることを認識し得たと認められる場合には、これが技術基準に適合しないと判断し得たこととなる。」「経済産業大臣としては、長期評価が公表された後のしかるべき時期に、一審被告東電に依頼するなどして、長期評価に示された見解に依拠して福島県沖で発生する可能性のある地震による津波の評価をしていれば、平成20年にされた津波の推計の結果と同様に、福島第一原発に敷地高を大きく超える波高(0.P.+15.7m)の津波が到来する危険性があることを認識し得た。そのような津波が到来すれば敷地内に浸水が生じて重大な事故が発生するおそれがあるのであるから、経済産業大臣は、福島第一原発が技術基準に適合していないとの判断に達し得る状態にあったといえる。」などと判断して、原審では認めていなかった国の責任を認めました。
これまで、同種の訴訟では、国の地震調査研究推進本部により公表された「長期評価」と土木学会により策定・公表された「津波評価技術」の優劣についての論争がなされていました。科学的な知見の優劣を突き詰めていくと科学論争になり、裁判所では判断できないということになりかねないのですが、そのような議論をふまえてだと思いますが、一定の科学的な信頼度のある知見があったのであれば、それを規制に取り込むべきであったという判断は、説得力のあると思いました。
同種事件において、国の責任について、参考になる判決だと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所