茨城県にある東海第二原発に対して周辺などの住民が運転の差止を求めた判決となります。
水戸地裁は、「発電用原子炉施設は、原子炉の運転中に人体に有害な多量の放射性物質を発生させることが不可避であり、また、発電用原子炉施設の事故は、高度な科学技術力をもって複数の対策を成功させかつこれを継続することができなければ収束に向かわず、一つでも失敗すれば、事故が進展、拡大し、多数の周辺住民の生命、身体に重大かつ深刻な被害を与えることになりかねないという、他の科学技術の利用に伴う事故とは質的にも異なる特性がある」「また、原子炉運転中に事故の要因となる自然災害等の事象の予測を確実に行うことはできず、いかなる事象が生じたとしても発電用原子炉施設から放射性物質が周辺の環境に絶対に放出されることのない安全性(絶対的安全性)を確保することは、現在の科学技術水準をもってしても、達成することは困難といわざるを得ない」「そこで、周辺住民に対して大きなリスク源となる発電用原子炉施設が、予測の不確実さに対処しつつリスクの顕在化を防いで安全性を確保するための方策として、深層防護の考え方を適用することが有効とされており、国際原子力機関(IAEA)は第1から第5までの防護レベルによる深層防護の考え方を採用している」という前提を示しました。
そのうえで「避難計画等の第5の防護レベルについては、本件発電所の原子力災害対策重点区域であるPAZ及びU PZ(概ね半径30km)内の住民は94万人余に及ぶところ、原子力災害対策指針が定める防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというにはほど遠い状態であり、防災体制は極めて不十分であるといわざるを得ず、PAZ及びUPZ内の住民である原告79名との関係において、その安全性に欠けるところがあると認められ、人格権侵害の具体的危険がある」と判断して運転の差止を命じました。
避難計画の不備を理由に、原発の運転の差止を認めた最初の判決ということになります。判決が前提として指摘するように、原発に絶対的な安全性と確保することが困難だとすれば、実効性のある避難計画を策定することは重視されるべきではないかと思いました。
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弁護士吉野隆二郎
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