よしの法律事務所コラム

2018.08.22更新

薬剤師の時間外労働に関する賃金の支払いが争われた事案のようです。
東京高裁は、「本件では、業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのかが被上告に伝えられておらず、休憩時間中の労働時間を管理し、調査する仕組みがないため上告人が被上告人の時間外労働の合計時間を測定することができないこと等から、業務手当を上回る時間外手当が発生しているか否かを被上告人が認識することができないものであり、業務手当の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことはできない」と判断していました。
最高裁は、雇用契約書などに「業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた」ことや、実際に支払われた業務手当は「1か月当たりの平均所定労働時間(157.3時間)を基に算定すると、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するもので」「実際の時間外労働等の状況と大きくかい離するものではない」ことなどを根拠に、業務手当の支払を時間外手当の支払いとみることができるとして、原判決を取消しました。
実際の労働状況と大きくかい離していないということは1つの大きな要素であったのではないかと思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87883

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2018.08.07更新

平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、2018年8月13日(月)から8月16日(木)までお盆休みとさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.07.31更新

昨日、諫早湾干拓事業に関して、平成22年12月に確定した開門を命ずる判決に基づく強制執行をさせないために、国が提訴した請求異議訴訟の控訴審の判決が出されました。
佐賀地裁は、国の訴えを退けたのですが、福岡高裁は原判決を取り消して、漁業者らの強制執行を認めない判決を言い渡しました。
強制執行を認めない理由は、漁業者らの請求の基礎となっていた「共同漁業権」が平成25年8月31日で消滅したということでした。
しかし、免許の期間以外はまったく同じ内容の「共同漁業権」が存在することは判決も認めており、そのような形式的な判断で確定判決による強制執行をできないようにしなければならないのか理解できません。
そして、この判決は、平成22年12月に確定した判決が、国の準備のために3年間の猶予を与えたということを、あえて無視して判決文に記載していません。平成22年の確定判決の履行期限である平成25年12月より前に、漁業者らの強制執行ができる権利がなくなるという矛盾について隠そうとする意図が明らかだと思います。この点はあまり報道されていないようですが、司法制度の根幹に関わる重要な問題だと思います。
判決と同じ日に、この判決に関する日弁連の会長談話が出されました。この重要な問題を的確にとらえた内容だと思います。

https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2018/180730.html

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.07.13更新

福島第一原発事故後の最初の判決である福井地方裁判所平成26年5月21日判決の控訴審の判決です。
原審である福井地裁は、大飯原発3号機及び4号機の運転の差し止めを認めましたが、この高裁判決は原判決を取り消して、運転の差し止めを認めませんでした。
高裁判決では「すなわち、我が国の法制度は、原子力発電を国民生活等にとって一律に有害危険なものとして禁止することをしておらず、原子力発電所で重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常に放出される危険性や、放射性廃棄物の生成・保管・再処理等に関する危険性に配慮しつつも、これらの危険に適切に対処すべく管理・統制がされていれば、原子力発電を行うことを認めているのである。そうすると、このような法制度を前提とする限り、人格権に基づく原子力発電所の運転差止めの当否を考えるに当たっても、原子力発電所の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって、それ自体で人格権を侵害するということはできない。」という前提に立ちながら「もっとも、この点は、法制度ないし政策の選択の問題であり、福島原発事故の深刻な被害の現状等に照らし、ひとたび重大な原発事故が起きれば、大量の放射性物質が放出されるなどして、周辺住民等に広範かつ深刻な被害が生じるおそれがあり、しかも、被害が起きればそれが長期にわたって継続・拡大し、その回復が極めて困難であることなどを考慮して、我が国のとるべき道として原子力発電そのものを廃止・禁止することは大いに可能であろう。しかし、その当否を巡る判断は、もはや司法の役割を超えるものであり、国民世論として幅広く議論され、それを背景とした立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべき事柄である。」と原発を運転するかどうかは政治的な判断であって、司法の役割ではないという立場を明言しました。
原発が事故を起こした場合には、極めて重大な人権侵害が生じるにもかかわらず、その人権侵害に対する救済を最初から司法が放棄するというのは、司法の役割をどう考えているのか疑問に感じました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87868

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.07.05更新

正社員と有期労働契約を結んだ社員との間の賃金待遇の格差が争われたもう1つの最高裁判決です。
パラセメントタンク車の運転手で、定年退職後に再雇用された嘱託社員のケースとなります。当該賃金種目の趣旨を個別に検討した上で、精勤手当(休日を除いて全ての日に出勤したものに与える手当)と超勤手当(時間外手当)について、不合理な差別であると判断しました。
しかし、その一方で、「能率給及び職務給が支給されないこと」「住宅手当及び家族手当が支給されないこと」「役付手当が支給されないこと」「賞与が支給されないこと」については区別が不合理とは認められないと判断しました。
定年退社後の再雇用ということから、上記のような判断になったと思われますが、少子高齢化社会で労働者が不足している現状において、熟練した労働者を確保していくという観点からすると、別の考え方もあるのかもしれないとは思います(政策論のようにも思えますが)。
いずれにせよ、正社員と有期労働契約を結んだ社員との賃金などの区別をどのような視点で定めればいいのかについては、今後の参考になる判例だと思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87785

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.06.26更新

正社員と有期労働契約を結んだ社員との間の賃金待遇の違いが争われた最高裁判決が同じ日に2つ出されましたが、そのうちの1つの判決になります。
トラック運転手のケースで、「住宅手当」については、全国規模での広域移動の可能性があることから正社員にしか支給しないことは不合理ではないと判断しましたが、「皆勤手当」「無事故手当」「作業手当」「給食手当」「通勤手当」については、手当の趣旨から検討したうえで、「手当の金額が異なるという労働条件の相違は,不合理であると評価することができる」と判断して、正社員との差額の損害賠償を認めました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87784
この判決をふまえて、今後は、手当の趣旨から判断するという手法が、一般的になっていくのだろうと思います。

弁護士吉野隆二郎

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2018.06.18更新

九州弁護士会連合会の環境問題に関する連絡協議会の委員として、長崎県で建設が予定されている石木ダムの現地調査に参加しました。長崎県と佐世保市はヒアリング調査を受け入れていただけないとのことで、土地収用などの対象となっておられる住民の方々からお話しをお聞きするとともに、現地の状況を見て来ました。
事業の内容を聞いて、支流の流量をカットすることによって本体の河川の下流に治水効果があるとは考えにくいことや、佐世保市の水需要が現時点で逼迫しているとも思われないことから、事業の必要性については疑問に思いました。他の大型公共事業でも言えることなのですが、当初の計画が昭和37年からあったという話で、50年以上の時間が経過する中で、目的を変えながら計画が生き続けるのはどうしてなのかと不思議に思うばかりです。
また、石木ダムが建設されただけでは、佐世保市に新たな水源の水が供給できるわけでなく、さらなる導水事業に300億円もの費用がかかるとすれば、むしろ、佐世保市民とって過大な負担になる事業ではないかとも思いました。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.06.11更新

6月6日から7日にかけて、第43回公害被害者総行動が開催されました。私は有明弁護団の一員として、農水省との交渉に参加しました。開門を命じた確定判決に基づく強制執行をできなくすることを目的に国が提訴した請求異議訴訟の控訴審(福岡高裁)における和解協議において、開門しないことを前提として「基金」を作ることが国から提案されました。この「基金」は、農水省の担当者によれば、有明海再生のために必須なものではなく、「基金を活用して効果が出るように努力する」というレベルのものだという説明でした。私たちからは、裁判で和解するか(開門の可否をどうするか)の話と、有明海を再生させるための手段の1つとして基金を設立することは別の次元の話ではないか、基金を創設するには特別な理由が必要だとしても、有明海の再生のためには特別措置法まであるのだから、その法律の枠内で基金を設立することは可能ではないかなどと、「開門の可否」と切り離して、基金を設立するのであれば私たちも最大限協力するという話もしましたが、農水省の担当者には聞き入れてもらえませんでした。
効果があるのかわからない「基金」を創設するために、有明海の再生の第一歩となる開門請求権を放棄させようとするという農水省の態度には納得がいきません。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.05.26更新

県議会における議員の発言が不穏当であるということで、その発言が会議録の原本には掲載されているものの配布用の会議録などに掲載されなかったことについて、県議会議長が会議規則に基づき当該発言を取り消した行為を、行政処分ととらえてその取り消しを求める裁判を提訴した事案のようです。
高裁では、司法審査の対象となると判断されたようですが、最高裁においては、地方自治法の趣旨から、「議員の議事における発言に関しては,議長に当該発言の取消しを命ずるなどの権限を認め,もって議会が当該発言をめぐる議場における秩序の維持等に関する係争を自主的,自律的に解決することを前提としているものと解される」と解釈して、「県議会議長の県議会議員に対する発言の取消命令の適否
は,司法審査の対象とはならないと解するのが相当である」と判断しました。
地方議会の自律的な運営をどう考えるのかということについて考えさせられる判決だと思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87701

弁護士吉野隆二郎

投稿者: よしの法律事務所

2018.05.17更新

株券が発行されていない株式を差し押さえた債権者が、売却命令まで得て株式を売却した後に、配当異議の訴えが提起されたことから、配当額に相当する金銭の供託がされた後に、債務者が破産して破産管財人が選任された場合に、差押え手続の効力がどうなるかが争われた事案のようです。
最高裁は、強制執行は終了していなかったということを前提に、執行裁判所が差押命令を取り消したという判断は正当だと結論づけました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87689
破産しそうな債務者に、破産しないうちに、判決などの債務名義を取得して強制執行で回収をはかるということは弁護士なら誰でも考えることですが、ほんのちょっとの差で優先的な回収ができなくなるというリスクについて考えさせられる判例です。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

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