よしの法律事務所コラム

2019.02.12更新

2月6日~7日にかけて、日弁連公害対策・環境保全委員会の委員として、三番瀬の調査に行って来ました。三番瀬とは、東京湾の最奥部で浦安市・市川市・船橋市・習志野市の東京湾沿いに広がる約1800haの干潟・浅海域のことです。干潟の部分は埋め立てられたため、浅海域しか残っていないというような説明に聞きましたが、浚渫土砂で埋め戻された部分も十分干潟の機能を有しているように思いました(カニの穴が多数ありました)。翌日からは寒波になったようですが、2月7日は暖かかったことから、様々な種類の鳥を見ることもできました。三番瀬の生態系には十分豊かさが残っているのだと思いました。夏には、貧酸素水塊の発生だけでなく、硫化分を含んだ青潮現象もみられるそうです。有明海の問題に関与していることから、閉鎖性水域の環境の悪化の現状については考えさせられました。貧酸素水塊の抑制には流動の回復しかないように思われますので、三番瀬の自然環境の回復の困難さを感じるとともに、有明海では、開門調査を行えば回復の可能性はあるのにどうして今まで開門調査が行えなかったのだろうかと残念に思えました。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2019.01.30更新

諫早湾の排水門の開門を求めて、長崎県の諫早湾内の漁業者が長崎地方裁判所に提訴した裁判において、1月28日に、堤裕昭教授の証人尋問(主尋問)が行われました。堤教授の研究は現場での観測をその論拠とするもので、これまでも説得力があると思っておりましたが、有明海奥部の底質の状態から、過去に東側と西側で非対称性な流れがあったということを突き止めたのは、非常に大きな成果だと思います。そして、その非対称性な流れが、東側と西側で対称に近くなった結果として、有明海奥部の西側の流れが速くなることについて理論的にわかりやすく整理していただけました。公害等調整員会の原因裁定手続きにおいて、有明海湾奥部の西側の潮流が速くなっているという専門委員のシミュレーションの結果(例えば、下の図)や現地観測の結果をもって、潮受け堤防による締切りと潮流の減少との因果関係が否定されましたが、その判断が誤りであったことは明確になったと思います。

専門委員報告書

弁護士吉野隆二郎

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2019.01.07更新

本日から、2018年の業務を開始いたしました。4月には弁護士としての経験年数が満20年を経過し、21年目に突入します。福岡市博多区の方を始め多くの方々へリーガルサービスを提供していくため今年も努力して参ります。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.12.27更新

平素は当事務所をご利用いただき誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、2018年12月29日(土)から2019年1月6日(日)まで年末年始休業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。

弁護士吉野隆二郎

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2018.12.19更新

いわゆる「振り込め詐欺」の新しい犯行態様なのですが、現金を入れた荷物を宅配便で発送させて、それを荷受人になりすまして受け取る役割を果たした者が、詐欺罪の共謀共同正犯になるのかが争われた事案となります。
最高裁は、無罪とした高裁判決を破棄して、有罪と判断しました。
その理由としては「被告人は、異なる場所で異なる名宛人になりすまして同様の受領行為を多数回繰り返し、1回につき約1万円の報酬等を受け取っており、被告人自身、犯罪行為に加担していると認識していたことを自認している。以上の事実は、荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるものであり、本件の手口が報道等により広く社会に周知されている状況の有無にかかわらず、それ自体から、被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させるものというべきである」ことを前提に「被告人は、自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められる」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88179
現金を詐取された被害者の心情を考えれば、そのような受取行為に関与すること自体の処罰の必要性が高いことはよく分かります。
しかし、詐欺罪は、財物に対する犯罪なので、その財物の内容が何なのかは、詐欺の故意を判断するうえで重要だと思われるのですが、その部分が抽象化されていくことは、刑事処罰の範囲が拡大していることにつながるように思えて、本当にそれでいいのかについてやや疑問が残ります。
とはいえ、このような形式の詐欺も増えているということが、本件を契機に社会に周知されて、協力する人がいなくなっていけばいいと思われるところです。

弁護士吉野隆二郎

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2018.12.05更新

表題のタイトルのシンポジウムが、12月1日長崎県立図書館多目的ホールで開催されました。3つの視点のうち、「公共事業のあり方から考える」ということで長崎大学名誉教授の宮入興一氏の講演がありました。
土地改良法上では投資効率(費用対効果)として1以上が必要であるところ、当該事業は当初から農水省の見積もりでも、1.03、縮小計画後は0.83となっており、採算割れしても公共事業が続けられることの不合理さを再認識しました。
また、公共事業を行うテクニックの一般論として、①公共事業の実施が自己目的化(「最初に公共事業ありき」)、②ブレーキのついていない公共事業(「走り出したら止まらない」)、③際限ない公共事業の膨張(「小さく生んで大きく育てる」:最初は予算を小規模に計上して、事業の進行につれ予算を膨張させていく)、④公金(=税金)が次つぎと投入される公共事業(「おんぶに抱っこの公共事業」:本件事業では、いろいろな特例を使って国庫負担を増やしていった)のすべてがよくあてはまるとも感じました。
公共事業は何のためにあるのかを考えさせられました。
(宮入先生の過去の論考が含まれる資料です。)

http://www.isahaya-higata.net/sp/assess2006.pdf

弁護士吉野隆二郎

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宮入先生

 

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2018.11.30更新

先日、漁業法の改正案が衆議院で可決され、参議院に送られました。
この改正の趣旨は「漁業は、国民に対し水産物を供給する使命を有しているが、水産資源の減少等により生産量や漁業者数は長期的に減少傾向。他方、我が国周辺には世界有数の広大な漁場が広がっており、漁業の潜在力は大きい。適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、資源管理措置並びに漁業許可及び免許制度等の漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直す」と説明されています。
しかし、条文を見ると、漁業法の目的(第1条)の「漁業の民主化」という目的が外され、条文の並びも「漁業権」という漁業者の権利に関するものが一番最後に持って行かれるなど、漁業者の権利を弱めるための全面的な改正の内容になっています。

http://www.maff.go.jp/j/law/bill/197/index.html
沿岸漁業を行っている漁業者のほとんどは家族経営などの零細業者と言われています。そのような零細な漁業者にとっては、漁業権が更新されるかは死活問題であり、恣意的な運用がなされないために、漁業者の選挙によって選ばれた者を含む漁業調整委員会での漁場の調整が行われてきましたが、漁業調整員会の選挙が廃止されることとなり、恣意的な運用の防止が難しくなることが懸念されます。
また、海洋保護区の設定の関係では、漁業者による管理が行われているということで、共同漁業権の区域も海洋保護区として扱っていることとも矛盾するようにも思えます。
有明海の問題の裁判を担当している経験からは、十分な議論がなされないままに、このような法律の改正がなされることには疑問が残ります。

弁護士吉野隆二郎

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2018.11.24更新

福岡県弁護士会の公害・環境委員会の調査として、11月16日に、福津市にヒアリングに行ってきました。福津市は、環境基本計画とあわせて表題の名称の生物多様性地域戦略を策定しています。生物多様性基本法第13条において、「都道府県及び市町村は、生物多様性国家戦略を基本として、単独で又は共同して、当該都道府県又は市町村の区域内における生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画(以下「生物多様性地域戦略」という。)を定めるよう努めなければならない」と定められているとおり、「生物多様性地域戦略」を定めることは自治体の努力義務となれています。しかし、都道府県や政令指定都市以外では策定が進んでおらず、福岡県内の市町村で策定済みは4市(福岡市・北九州市・久留米市・福津市)に限られています。
福津市は、策定の事務局が「うみがめ課」というユニークな名称であることや、九州工業大学や市内の2つの高校生が策定に協力するなど、他の大きな自治体とは異なったやり方で、小規模な自治体が今後地域戦略を策定するには、非常に参考になると感じました。また、津屋崎干潟なども視察しました。

http://city.fukutsu.lg.jp/kenkou/kankyo/keikaku.php

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.11.08更新

遺留分の請求に関する最高裁の判例です。
事案を整理すると、父親の相続の際に、妻と子ども4人(そのうち1名は養子で子どものうちの1名の妻)のうち、妻と養子が養子の夫(子)に各自の相続分を譲渡して相続手続から脱退し、譲渡を受けた相続分をふまえた遺産分割の調停が成立していたようです。この父親の相続の際に脱退した妻(母親)が相続分の譲渡を受けた相続人に全財産を相続させる内容の公正証書での遺言をしたことから、母親が亡くなった際の相続において、遺留分の算定の基礎となる財産の範囲が争いになりました。
最高裁は「相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは、以上のように解することの妨げとなるものではない」いう前提を述べたうえで「したがって、共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する『贈与』に当たる」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88060
相続分の譲渡は、原則として「特別受益」になるというような考え方は、始めて示されたように思います。遺留分制度の趣旨から、相続分の譲渡を利用して、特定の相続人の取得分が突出して増えてしまう不均衡を是正しようという考えからの判断ではないかとは思いますが、その当否については現状では何とも言い難いように思えます。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.10.22更新

交通事故が労災となるケースにおいて、自賠責保険の支払いと労災の支払いとの関係が争われた事案のようです。判決文からは明らかでないようですが、相手方車両に任意保険がかけられていなかった事案と思われます(人身傷害特約も適用されない事案のように思われます)。
最高裁は「労災保険法12条の4第1項は,第三者の行為によって生じた事故について労災保険給付が行われた場合には,その給付の価額の限度で,受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権は国に移転するものとしている。同項が設けられたのは,労災保険給付によって受給権者の損害の一部が塡補される結果となった場合に,受給権者において塡補された損害の賠償を重ねて第三者に請求することを許すべきではないし,他方,損害賠償責任を負う第三者も,塡補された損害について賠償義務を免れる理由はないことによるものと解される。労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするため必要な保険給付を行うなどの同法の目的に照らせば,政府が行った労災保険給付の価額を国に移転した損害賠償請求権によって賄うことが,同項の主たる目的であるとは解されない。したがって,同項により国に移転した直接請求権が行使されることによって,被害者の未塡補損害についての直接請求権の行使が妨げられる結果が生ずることは,同項の趣旨にも沿わないものというべきである」という理由から「被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88011
そもそも、任意保険に加入しないで自動車を運転すること自体が問題なのだとは思いますが、交通事故の被害者の救済の役に立つ判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

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