よしの法律事務所コラム

2018.12.05更新

表題のタイトルのシンポジウムが、12月1日長崎県立図書館多目的ホールで開催されました。3つの視点のうち、「公共事業のあり方から考える」ということで長崎大学名誉教授の宮入興一氏の講演がありました。
土地改良法上では投資効率(費用対効果)として1以上が必要であるところ、当該事業は当初から農水省の見積もりでも、1.03、縮小計画後は0.83となっており、採算割れしても公共事業が続けられることの不合理さを再認識しました。
また、公共事業を行うテクニックの一般論として、①公共事業の実施が自己目的化(「最初に公共事業ありき」)、②ブレーキのついていない公共事業(「走り出したら止まらない」)、③際限ない公共事業の膨張(「小さく生んで大きく育てる」:最初は予算を小規模に計上して、事業の進行につれ予算を膨張させていく)、④公金(=税金)が次つぎと投入される公共事業(「おんぶに抱っこの公共事業」:本件事業では、いろいろな特例を使って国庫負担を増やしていった)のすべてがよくあてはまるとも感じました。
公共事業は何のためにあるのかを考えさせられました。
(宮入先生の過去の論考が含まれる資料です。)

http://www.isahaya-higata.net/sp/assess2006.pdf

弁護士吉野隆二郎

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宮入先生

 

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2018.11.30更新

先日、漁業法の改正案が衆議院で可決され、参議院に送られました。
この改正の趣旨は「漁業は、国民に対し水産物を供給する使命を有しているが、水産資源の減少等により生産量や漁業者数は長期的に減少傾向。他方、我が国周辺には世界有数の広大な漁場が広がっており、漁業の潜在力は大きい。適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、資源管理措置並びに漁業許可及び免許制度等の漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直す」と説明されています。
しかし、条文を見ると、漁業法の目的(第1条)の「漁業の民主化」という目的が外され、条文の並びも「漁業権」という漁業者の権利に関するものが一番最後に持って行かれるなど、漁業者の権利を弱めるための全面的な改正の内容になっています。

http://www.maff.go.jp/j/law/bill/197/index.html
沿岸漁業を行っている漁業者のほとんどは家族経営などの零細業者と言われています。そのような零細な漁業者にとっては、漁業権が更新されるかは死活問題であり、恣意的な運用がなされないために、漁業者の選挙によって選ばれた者を含む漁業調整委員会での漁場の調整が行われてきましたが、漁業調整員会の選挙が廃止されることとなり、恣意的な運用の防止が難しくなることが懸念されます。
また、海洋保護区の設定の関係では、漁業者による管理が行われているということで、共同漁業権の区域も海洋保護区として扱っていることとも矛盾するようにも思えます。
有明海の問題の裁判を担当している経験からは、十分な議論がなされないままに、このような法律の改正がなされることには疑問が残ります。

弁護士吉野隆二郎

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2018.11.24更新

福岡県弁護士会の公害・環境委員会の調査として、11月16日に、福津市にヒアリングに行ってきました。福津市は、環境基本計画とあわせて表題の名称の生物多様性地域戦略を策定しています。生物多様性基本法第13条において、「都道府県及び市町村は、生物多様性国家戦略を基本として、単独で又は共同して、当該都道府県又は市町村の区域内における生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画(以下「生物多様性地域戦略」という。)を定めるよう努めなければならない」と定められているとおり、「生物多様性地域戦略」を定めることは自治体の努力義務となれています。しかし、都道府県や政令指定都市以外では策定が進んでおらず、福岡県内の市町村で策定済みは4市(福岡市・北九州市・久留米市・福津市)に限られています。
福津市は、策定の事務局が「うみがめ課」というユニークな名称であることや、九州工業大学や市内の2つの高校生が策定に協力するなど、他の大きな自治体とは異なったやり方で、小規模な自治体が今後地域戦略を策定するには、非常に参考になると感じました。また、津屋崎干潟なども視察しました。

http://city.fukutsu.lg.jp/kenkou/kankyo/keikaku.php

弁護士吉野隆二郎

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2018.11.08更新

遺留分の請求に関する最高裁の判例です。
事案を整理すると、父親の相続の際に、妻と子ども4人(そのうち1名は養子で子どものうちの1名の妻)のうち、妻と養子が養子の夫(子)に各自の相続分を譲渡して相続手続から脱退し、譲渡を受けた相続分をふまえた遺産分割の調停が成立していたようです。この父親の相続の際に脱退した妻(母親)が相続分の譲渡を受けた相続人に全財産を相続させる内容の公正証書での遺言をしたことから、母親が亡くなった際の相続において、遺留分の算定の基礎となる財産の範囲が争いになりました。
最高裁は「相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは、以上のように解することの妨げとなるものではない」いう前提を述べたうえで「したがって、共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する『贈与』に当たる」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88060
相続分の譲渡は、原則として「特別受益」になるというような考え方は、始めて示されたように思います。遺留分制度の趣旨から、相続分の譲渡を利用して、特定の相続人の取得分が突出して増えてしまう不均衡を是正しようという考えからの判断ではないかとは思いますが、その当否については現状では何とも言い難いように思えます。

弁護士吉野隆二郎

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2018.10.22更新

交通事故が労災となるケースにおいて、自賠責保険の支払いと労災の支払いとの関係が争われた事案のようです。判決文からは明らかでないようですが、相手方車両に任意保険がかけられていなかった事案と思われます(人身傷害特約も適用されない事案のように思われます)。
最高裁は「労災保険法12条の4第1項は,第三者の行為によって生じた事故について労災保険給付が行われた場合には,その給付の価額の限度で,受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権は国に移転するものとしている。同項が設けられたのは,労災保険給付によって受給権者の損害の一部が塡補される結果となった場合に,受給権者において塡補された損害の賠償を重ねて第三者に請求することを許すべきではないし,他方,損害賠償責任を負う第三者も,塡補された損害について賠償義務を免れる理由はないことによるものと解される。労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするため必要な保険給付を行うなどの同法の目的に照らせば,政府が行った労災保険給付の価額を国に移転した損害賠償請求権によって賄うことが,同項の主たる目的であるとは解されない。したがって,同項により国に移転した直接請求権が行使されることによって,被害者の未塡補損害についての直接請求権の行使が妨げられる結果が生ずることは,同項の趣旨にも沿わないものというべきである」という理由から「被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88011
そもそも、任意保険に加入しないで自動車を運転すること自体が問題なのだとは思いますが、交通事故の被害者の救済の役に立つ判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.10.12更新

昨年12月13日に広島高裁が伊方原発の運転を差し止める決定を下しました(同年12月14日の当ブログで紹介)が、その保全異議審の決定となります。
広島高裁は、決定を取り消して、住民側からの伊方原発の運転差し止めを認めませんでした。
原決定で問題とされた火山の予測に関しては「検討対象火山の噴火の時期及び程度を数十年前の段階で相当程度の正確さで予測することは困難であるとの現在の火山学の水準のもとにおいて、原子力発電所の安全性の確保の観点から巨大噴火の危険をどのように想定すべきかについては、我が国の社会が自然災害に対する危険をどの程度まで容認するかという社会通念を基準として判断せざるを得ない。阿蘇カルデラにおいて阿蘇4噴火と同程度の破局的噴火が発生した場合、壊滅的被害が発生することになるが、現在の知見では、その前駆現象を的確にとらえることはできず、具体的予防措置を事前にとることはできない。その一方で、その発生頻度は著しく小さく、国は破局的噴火のような自然災害を想定した具体的対策は策定しておらず、その策定しようという動きがあるとも認められないが、国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない。そうであれば、破局的噴火によって生じるリスクは、その発生の可能性が相応の根拠をもって示されない限り、原子力発電所の安全性確保の上で自然災害として想定しなくても安全性に欠けることはないとするのが、少なくとも現時点における我が国の社会通念であると認めるほかない」などと判断しました。

http://saiban.hiroshima-net.org/karishobun/decision.html
しかし、政府が世界最高水準の規制基準だと言っている規制基準にどうして「火山」を検討の対象とする必要があったのでしょうか?技術的に検討が必要な問題であるはずなのに「社会通念」という言葉を使って、検討の対象から外すという恣意的な判断としか思えず、裁判官の言う「社会通念」が何なのか、わからなくなる決定です。

弁護士吉野隆二郎

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2018.10.05更新

地球システム・倫理学会と一般社団法人全国日本学司会が主催して9月29日に東京大学農学部フードサイエンス棟1階中島ホールで開催された表記シンポジウムを見に行きました。台風24号のために上京するのを迷いましたが、スケジュールを日帰りに変更することで何とか無事にシンポジウムを見ることができました。会場は100名くらいの規模だったようですが、立ち見が出るほどいっぱいで、熱気を感じました。九州以外から参加されている方には、諫早湾干拓農地の営農の厳しさを発表した農業者の発言が衝撃的だったようです。私にとっては、福岡県立伝習館高校の教師や熊本県立岱志高校の教師及び生徒が、その活動の内容や韓国の順天湾の干潟の保全の取組を調査した結果を発表したことが印象に残りました。順天湾の例は参考にならないのではないかという後ろ向きの発言もありましたが、2000年のノリの大不作以降、有明海再生が叫ばれていながら、十分な成果が出ていない現状からすれば、外国の例でも参考になる点を探す努力をすることが重要ではないかと思います。高校の関係者の発言の中で、一度破壊した自然は簡単に回復しないので、できるだけ自然を破壊しないようにするのが重要だという趣旨の発言がありました。まったく、その通りであり、そのような考え方を高校時代に学べることは貴重だと思いますので、今後も同様の部活動を続けていっていただきたいと思いました。

シンポの風景

弁護士吉野隆二郎

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2018.09.22更新

昨年の8月28日~29日に続いて、9月14日に公共事業チェック議員の会の諫早湾の視察が行われました。今年は、前日に石木ダムの視察を行ったようです。
私は、よみがえれ!有明海訴訟弁護団を代表して、訴訟の経過等について説明をしました。国会議員は4名参加され、熱心に説明を聞いていただけました。
国が提案する基金案についての質問もありましたので、本当に有明海再生のために必要なのであれば裁判と関係なく基金を創設すべきであること、基金による和解をすることによって関係のない有明海再生事業が打ち切られる懸念があることなどを述べさせていただきました。
報道によれば、同会事務局長の初鹿衆議院議員が、営農者側が開門を求めて訴訟を提起した事実を重く捉え「これまでの農水省の主張は覆る。両者が納得する選択肢は開⾨以外なくなっている」と話したとのことです。
そのような認識が国会議員に広がっていくことを願います。

弁護士吉野隆二郎

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2018.09.17更新

柔道事故に関して地裁と高裁の判断が逆となった事案となります。1審の福岡地裁の判決は、本ブログにおいて、昨年5月30日付で紹介しています。報道によれば、本年9月6日付けで上告が棄却されたとのことですので高裁判決も紹介します。
高裁判決は、事故の態様について「一審原告AやEのそれぞれの行動が明らかに危険なものであったとは認められない」と原審の判断を変更した上で、「G教諭の上記指導方法は上記各手引書等の要請を概ね満たしていた」ことや「一審原告Aは、中学校3年間、柔道部に所属して多くの練習及び試合を経験したこと、本件事故当時の年齢や一審原告Aの本人尋問における供述内容等を考えると、G教諭の上記指導内容を理解し、柔道が怪我や事故の危険を孕む競技であり、無理に技を掛けたり、頭部を畳みに打ちつけることの危険性は十分認識していた」ことなどを理由に「G教諭の通常の授業課程における安全指導について不適切な点があったとは認められない」などと判断して、一審判決を取り消して、学校側の責任を認めない判断をしました。
しかし、その一方で高裁判決は「G教諭を含めたD高校の教諭らが、前年度の武道大会における2件の事故について詳しく調査した上で、本件大会での事故防止対策を具体的に検討した形跡が見当たらないことは、本件大会における事故防止策に不十分な点があったことを示すものといわざるをえず、また、生徒に本件大会前に練習試合を行わせたり、本件大会の開会式において、生徒に対して張り切りすぎて怪我をしないように改めて注意を行なうことは、生徒が本件大会の形式や雰囲気等により反則行為や無理に技を掛けるなどの危険な行為に及ぶことを防止するという観点からは望ましいといえる」とも述べています。
このような事故を防ぐためには、事前の事故防止対策を十分に検討することが重要ではないかと思われますが、その点が軽んじられているように読める内容であることが残念に思われます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87538

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2018.08.31更新

東京都の都立高校の教職員が、各所属高の卒業式又は入学式において、国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の職務命令に従わなかったことを理由として、再任用や再雇用の際に不合格としたり、退職後に再任用職員等に採用しなかったことに対して、損害賠償を求めた訴訟の最高裁判決となります。
東京高裁は、本件の不合格などとした取扱は、「被上告人らが本件職務命令に違反したことを不当に重視する一方で、被上告人らの従前の勤務成績を判定する際に考慮されるべき多種多様な要素等を全く考慮しないものであって、再任用制度等の趣旨に反し、その運用実態とも大きく異なるものであるから、本件不合格等に係る都教委の判断は、客観的合理性及び社会的相当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用をしたものに当たる」と判断して、損害賠償の一部を認めました。
しかし、最高裁は「被上告人らの本件職務命令に違反する行為は、学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって、それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い。加えて、被上告人らが本件職務命令に違反してから本件不合格等までの期間が長期に及んでいないこと等の事情に基づき、被上告人らを再任用職員等として採用した場合に被上告人らが同様の非違行為に及ぶおそれがあることを否定し難いものとみることも、必ずしも不合理であるということはできない。これらに鑑みると、任命権者である都教委が、再任用職員等の採用候補者選考に当たり、従前の勤務成績の内容として本件職務命令に違反したことを被上告人らに不利益に考慮し、これを他の個別事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価し、そのような評価に基づいて本件不合格等の判断をすることが、その当時の再任用制度等の下において、著しく合理性を欠くものであったということはできない」と裁量権の範囲内であると判断して原判決を取り消して、被上告人らの損害賠償請求をすべて棄却しました。
1999年の国旗国歌法の成立の際には、当時の小渕首相も「新たに義務を課すものではない」との談話を発表していました。
しかし、この判決の考え方を前提とすれば、再雇用等が問題となる教員は、国家の斉唱をしないと、戒告等の注意処分を超えて、再雇用が認められず職を失うことになります。そうすると、再雇用等に関係する教員は、憲法で保障された思想良心の自由(憲法19条)が実質的に保障されないことになります。本当にそれでいいのか疑問に思われます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87885

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

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