よしの法律事務所コラム

2021.08.25更新

株式会社である上告人が,その監査役であった被上告人に対し,被上告人がその任務を怠ったことにより,上告人の従業員による継続的な横領の発覚が遅れて損害が生じたと主張して,会社法423条1項に基づき,損害賠償を請求している事案のようです。原審の東京高裁は「監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役(以下「会計限定監査役」という。)は,会計帳簿の内容が計算書類等に正しく反映されているかどうかを確認することを主たる任務とするものであり,計算書類等の監査において,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかであるなど特段の事情のない限り,計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認していれば,任務を怠ったとはいえない。」と判断して,会社側の請求を認めなかったようです。
最高裁は「監査役は,会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として計算書類等の監査を行ってよいものではない。監査役は,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでなくとも,計算書類等が会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかを確認するため,会計帳簿の作成状況等につき取締役等に報告を求め,又はその基礎資料を確かめるなどすべき場合があるというべきである。そして,会計限定監査役にも,取締役等に対して会計に関する報告を求め,会社の財産の状況等を調査する権限が与えられていること(会社法389条4項,5項)などに照らせば,以上のことは会計限定監査役についても異なるものではない」と述べたうえで「会計限定監査役は,計算書類等の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。」と判断して,原判決を破棄してました。そして「被上告人が任務を怠ったと認められるか否かについては,上告人における本件口座に係る預金の重要性の程度,その管理状況等の諸事情に照らして被上告人が適切な方法により監査を行ったといえるか否かにつき更に審理を尽くして判断する必要があり,また,任務を怠ったと認められる場合にはそのことと相当因果関係のある損害の有無等についても審理をする必要がある。」という理由から東京高裁へ差し戻しました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90486
会計限定監査役の責任の範囲についてどう考えるかについて参考になる判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所