よしの法律事務所コラム

2018.10.22更新

交通事故が労災となるケースにおいて、自賠責保険の支払いと労災の支払いとの関係が争われた事案のようです。判決文からは明らかでないようですが、相手方車両に任意保険がかけられていなかった事案と思われます(人身傷害特約も適用されない事案のように思われます)。
最高裁は「労災保険法12条の4第1項は,第三者の行為によって生じた事故について労災保険給付が行われた場合には,その給付の価額の限度で,受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権は国に移転するものとしている。同項が設けられたのは,労災保険給付によって受給権者の損害の一部が塡補される結果となった場合に,受給権者において塡補された損害の賠償を重ねて第三者に請求することを許すべきではないし,他方,損害賠償責任を負う第三者も,塡補された損害について賠償義務を免れる理由はないことによるものと解される。労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするため必要な保険給付を行うなどの同法の目的に照らせば,政府が行った労災保険給付の価額を国に移転した損害賠償請求権によって賄うことが,同項の主たる目的であるとは解されない。したがって,同項により国に移転した直接請求権が行使されることによって,被害者の未塡補損害についての直接請求権の行使が妨げられる結果が生ずることは,同項の趣旨にも沿わないものというべきである」という理由から「被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88011
そもそも、任意保険に加入しないで自動車を運転すること自体が問題なのだとは思いますが、交通事故の被害者の救済の役に立つ判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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