よしの法律事務所コラム

2022.11.02更新

養育費の支払等に関する公正証書に基づき、財産開示手続きの申立を行い、実施決定がなされたところ、相手方が執行抗告をした上で、期限が到来した金銭債権を弁済したところ、抗告審が「請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることができる」と解釈して、実施決定を取り消した事案のようです。
最高裁は、「請求債権の存否は請求異議の訴えによって判断されるべきものであって、執行裁判所が強制執行の手続においてその存否を考慮することは予定されておらず、このことは、強制執行の準備として行われる財産開示手続においても異ならないというべきである」という一般論を述べたうえで「債務者は、請求異議の訴え又は請求異議の訴えに係る執行停止の裁判の手続において請求債権の不存在又は消滅を主張し、法39条1項1号、7号等に掲げる文書を執行裁判所に提出することにより、財産開示手続の停止又は取消しを求めることができる」ことなどを理由に、原決定を破棄して、東京高裁に差戻しました。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91456
強制執行手続きと請求異議訴訟との役割分担の観点からは、論理的には、このような結論になるように思いました。
差戻しではなく、自判しなかった理由はよくわかりませんが、最高裁が指摘するような手続きができる時間的な猶予を与えたようにも思われます。
いずれにせよ、執行抗告と請求異議の役割分担に関して、参考になる判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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