よしの法律事務所コラム

2020.10.20更新

自宅建物の増築工事に関して,上告人から請負代金の請求の裁判が提訴され,被上告人から工事の瑕疵に対する損害賠償請求の裁判が反訴として提訴され,併合審理されていた事件において,上告人(施工者)側からの相殺が認められるかが争点となった事案のようです。原審では,相殺は認められていませんでした。
最高裁は「上記両債権は,同時履行の関係にあるとはいえ,相互に現実の履行をさせなければならない特別の利益があるものとはいえず,両債権の間で相殺を認めても,相手方に不利益を与えることはなく,むしろ,相殺による清算的調整を図ることが当事者双方の便宜と公平にかない,法律関係を簡明にするものであるといえる」と2つの請求権の関係について述べたうえで「これらの本訴と反訴の弁論を分離すると,上記本訴請求債権の存否等に係る判断に矛盾抵触が生ずるおそれがあり,また,審理の重複によって訴訟上の不経済が生ずるため,このようなときには,両者の弁論を分離することは許されないというべきである。そして,本訴及び反訴が併合して審理判断される限り,上記相殺の抗弁について判断をしても,上記のおそれ等はないのであるから,上記相殺の抗弁を主張することは,重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反するものとはいえない」と両者の弁論を分離することは許されないことを前提に相殺の抗弁を認めました。
瑕疵による損害賠償の請求をしている側に現実に賠償額が入らなくなるということが気になりはしますが,弁論を分離しないことが前提であれば,請負工事において1回の精算で解決できることを考えると,妥当な結論ではないかと思います。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89700

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所