2016.06.30更新

6月24日に天神チクモクビル大ホールで行われた「海域再生対策検討作業小委員会」「生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会」の合同会議(第14回)を傍聴してきました。この会議で始めて「再生方策」のたたき台が示されました。貧酸素水塊を軽減させるという目標は掲げられていましたが、例えば、その対策としては、①汚濁負荷量を増加させない、②有用2枚貝の生息料を回復させるための生息環境を保全・再生する(例えば、カキ礁を再生する)、③ベントスの生息密度を回復させるための生息環境を保全・再生し多様性を確保するがあげられていましたが、いずれも貧酸素水塊を直接軽減できるような対策ではなく、むしろ、軽減された結果として回復すべき漁場環境が述べられているにすぎないものでした。その他、覆砂や調査の継続など、これまでと何も変わらないものでした。委員の1人からは、いつまでに何をするのかという計画になっていないのではないかという指摘がありました。事務局は、その質問に対して、正面から回答はできていませんでした。開門をタブー視した再生策に限界があることは明らかになってきていると感じました。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2ー10-12-208

2016.06.23更新

先日、ゴミ減量化の研究のために、大木町のおおき循環センター(くるるん)を視察しました。ゴミの減量化については、ゴミ袋の有料化などで、全国的にも一定の成果があがっているようですが、近年は、横ばいのようで、生ゴミを減量しないとさらなる減量は見込めない状況にあります。一般家庭の取り組みとしては、宗像市のゴミ問題を考える住民の連合会・宗像が家庭へのダンボールコンポストの普及に努めているようです。大木町は自治体として、生ゴミの堆肥化施設の運営を行って、ごみの減量化を進めています。生ゴミの堆肥化施設は全国にもいくつもあるようですが、堆肥化施設を作るだけでなく、どうやって生ゴミを回収してくるのか、そして、作った堆肥を利用する仕組みをどうやって作っていくのかが重要なのだという説明には、納得させられました。

弁護士吉野隆二郎

2016.06.17更新

札幌ドームでの野球観戦中にファウルボールが顔面を直撃して右眼球破裂等の傷害を負われた方が、北海道日本ハムファイターズ、札幌ドーム、札幌市に対して損害賠償の請求を求めた裁判に関する判決です。
球場の安全対策について「本件当時,本件ドーム(特に本件座席付近)における上記内野フェンスは,本件ドームにおいて実施されていた他の上記安全対策を考慮すれば,通常の観客を前提とした場合に,観客の安全性を確保するための相応の合理性を有しており,社会通念上プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない」と判断して責任を認めませんでした。
しかし、被控訴人が「野球観戦の経験も硬式球に触れたこともなく,硬式球の硬さやファウルボールに関する上記危険性もほとんど理解していなかったこと」「そのような被控訴人が本件試合を観戦することになったのは,控訴人ファイターズが,新しい客層を積極的に開拓する営業戦略の下に,保護者の同伴を前提として本件試合に小学生を招待する企画(本件企画)を実施し,小学生である被控訴人の長男(当時10歳)及び長女(当時7歳)が本件試合の観戦を希望したため,被控訴人ら家族が本件企画に応じることとし,被控訴人も,長男及び長女の保護者の一人として,幼児(当時4歳)である二男を連れて,本件ドームに来場したという経緯であったこと」「本件座席は,内野席の最上部や外野席等と比較すると,相対的には上記のファウルボールが衝突する危険性が高い座席であったが,本件企画において選択可能とされていた席であったこと」などの事実を前提に「少なくとも上記保護者らとの関係では,野球観戦契約に信義則上付随する安全配慮義務として,本件企画において上記危険性が相対的に低い座席のみを選択し得るようにするか,又は保護者らが本件ドームに入場するに際して」ファウルボール等の「危険があること及び相対的にその危険性が高い席と低い席があること等を具体的に告知して,当該保護者らがその危険を引き受けるか否か及び引き受ける範囲を選択する機会を実質的に保障するなど,招待した小学生及びその保護者らの安全により一層配慮した安全対策を講じるべき義務を負っていたものと解するのが相当である」として、ファイターズにのみ責任を認めました。
プロ野球観戦に伴う損害賠償請求事件で、球団に責任が認められたという珍しいケースですが、球場自体の安全対策について責任を認めたものではありませんので、球場観戦の際にはファウルボールには十分に気をつけないといけないということを再認識させられました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85916

弁護士吉野隆二郎

2016.06.06更新

民法第968条1項によれば、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と規定されています。この「印」につき「花押」(署名の代わりに使用される記号・符号)が該当するかが争われた事件です。
最高裁は「民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及び氏名の自書のほかに、押印をも要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ、我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。」「花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。」と判断しました。
本人の同一性及び真意を確保するなら、印鑑でなくてもいいようにも思いますが、最高裁は「印」という形式面を重視したようです。
遺言書は形式的な要件を充たすように十分に検討して作成しなければならないということを再認識させられた判決です。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85930

弁護士吉野隆二郎