よしの法律事務所コラム

2018.11.30更新

先日、漁業法の改正案が衆議院で可決され、参議院に送られました。
この改正の趣旨は「漁業は、国民に対し水産物を供給する使命を有しているが、水産資源の減少等により生産量や漁業者数は長期的に減少傾向。他方、我が国周辺には世界有数の広大な漁場が広がっており、漁業の潜在力は大きい。適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、資源管理措置並びに漁業許可及び免許制度等の漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直す」と説明されています。
しかし、条文を見ると、漁業法の目的(第1条)の「漁業の民主化」という目的が外され、条文の並びも「漁業権」という漁業者の権利に関するものが一番最後に持って行かれるなど、漁業者の権利を弱めるための全面的な改正の内容になっています。

http://www.maff.go.jp/j/law/bill/197/index.html
沿岸漁業を行っている漁業者のほとんどは家族経営などの零細業者と言われています。そのような零細な漁業者にとっては、漁業権が更新されるかは死活問題であり、恣意的な運用がなされないために、漁業者の選挙によって選ばれた者を含む漁業調整委員会での漁場の調整が行われてきましたが、漁業調整員会の選挙が廃止されることとなり、恣意的な運用の防止が難しくなることが懸念されます。
また、海洋保護区の設定の関係では、漁業者による管理が行われているということで、共同漁業権の区域も海洋保護区として扱っていることとも矛盾するようにも思えます。
有明海の問題の裁判を担当している経験からは、十分な議論がなされないままに、このような法律の改正がなされることには疑問が残ります。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2018.11.24更新

福岡県弁護士会の公害・環境委員会の調査として、11月16日に、福津市にヒアリングに行ってきました。福津市は、環境基本計画とあわせて表題の名称の生物多様性地域戦略を策定しています。生物多様性基本法第13条において、「都道府県及び市町村は、生物多様性国家戦略を基本として、単独で又は共同して、当該都道府県又は市町村の区域内における生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画(以下「生物多様性地域戦略」という。)を定めるよう努めなければならない」と定められているとおり、「生物多様性地域戦略」を定めることは自治体の努力義務となれています。しかし、都道府県や政令指定都市以外では策定が進んでおらず、福岡県内の市町村で策定済みは4市(福岡市・北九州市・久留米市・福津市)に限られています。
福津市は、策定の事務局が「うみがめ課」というユニークな名称であることや、九州工業大学や市内の2つの高校生が策定に協力するなど、他の大きな自治体とは異なったやり方で、小規模な自治体が今後地域戦略を策定するには、非常に参考になると感じました。また、津屋崎干潟なども視察しました。

http://city.fukutsu.lg.jp/kenkou/kankyo/keikaku.php

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2018.11.08更新

遺留分の請求に関する最高裁の判例です。
事案を整理すると、父親の相続の際に、妻と子ども4人(そのうち1名は養子で子どものうちの1名の妻)のうち、妻と養子が養子の夫(子)に各自の相続分を譲渡して相続手続から脱退し、譲渡を受けた相続分をふまえた遺産分割の調停が成立していたようです。この父親の相続の際に脱退した妻(母親)が相続分の譲渡を受けた相続人に全財産を相続させる内容の公正証書での遺言をしたことから、母親が亡くなった際の相続において、遺留分の算定の基礎となる財産の範囲が争いになりました。
最高裁は「相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは、以上のように解することの妨げとなるものではない」いう前提を述べたうえで「したがって、共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する『贈与』に当たる」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88060
相続分の譲渡は、原則として「特別受益」になるというような考え方は、始めて示されたように思います。遺留分制度の趣旨から、相続分の譲渡を利用して、特定の相続人の取得分が突出して増えてしまう不均衡を是正しようという考えからの判断ではないかとは思いますが、その当否については現状では何とも言い難いように思えます。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所