よしの法律事務所コラム

2018.07.31更新

昨日、諫早湾干拓事業に関して、平成22年12月に確定した開門を命ずる判決に基づく強制執行をさせないために、国が提訴した請求異議訴訟の控訴審の判決が出されました。
佐賀地裁は、国の訴えを退けたのですが、福岡高裁は原判決を取り消して、漁業者らの強制執行を認めない判決を言い渡しました。
強制執行を認めない理由は、漁業者らの請求の基礎となっていた「共同漁業権」が平成25年8月31日で消滅したということでした。
しかし、免許の期間以外はまったく同じ内容の「共同漁業権」が存在することは判決も認めており、そのような形式的な判断で確定判決による強制執行をできないようにしなければならないのか理解できません。
そして、この判決は、平成22年12月に確定した判決が、国の準備のために3年間の猶予を与えたということを、あえて無視して判決文に記載していません。平成22年の確定判決の履行期限である平成25年12月より前に、漁業者らの強制執行ができる権利がなくなるという矛盾について隠そうとする意図が明らかだと思います。この点はあまり報道されていないようですが、司法制度の根幹に関わる重要な問題だと思います。
判決と同じ日に、この判決に関する日弁連の会長談話が出されました。この重要な問題を的確にとらえた内容だと思います。

https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2018/180730.html

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2018.07.13更新

福島第一原発事故後の最初の判決である福井地方裁判所平成26年5月21日判決の控訴審の判決です。
原審である福井地裁は、大飯原発3号機及び4号機の運転の差し止めを認めましたが、この高裁判決は原判決を取り消して、運転の差し止めを認めませんでした。
高裁判決では「すなわち、我が国の法制度は、原子力発電を国民生活等にとって一律に有害危険なものとして禁止することをしておらず、原子力発電所で重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常に放出される危険性や、放射性廃棄物の生成・保管・再処理等に関する危険性に配慮しつつも、これらの危険に適切に対処すべく管理・統制がされていれば、原子力発電を行うことを認めているのである。そうすると、このような法制度を前提とする限り、人格権に基づく原子力発電所の運転差止めの当否を考えるに当たっても、原子力発電所の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって、それ自体で人格権を侵害するということはできない。」という前提に立ちながら「もっとも、この点は、法制度ないし政策の選択の問題であり、福島原発事故の深刻な被害の現状等に照らし、ひとたび重大な原発事故が起きれば、大量の放射性物質が放出されるなどして、周辺住民等に広範かつ深刻な被害が生じるおそれがあり、しかも、被害が起きればそれが長期にわたって継続・拡大し、その回復が極めて困難であることなどを考慮して、我が国のとるべき道として原子力発電そのものを廃止・禁止することは大いに可能であろう。しかし、その当否を巡る判断は、もはや司法の役割を超えるものであり、国民世論として幅広く議論され、それを背景とした立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべき事柄である。」と原発を運転するかどうかは政治的な判断であって、司法の役割ではないという立場を明言しました。
原発が事故を起こした場合には、極めて重大な人権侵害が生じるにもかかわらず、その人権侵害に対する救済を最初から司法が放棄するというのは、司法の役割をどう考えているのか疑問に感じました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87868

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2018.07.05更新

正社員と有期労働契約を結んだ社員との間の賃金待遇の格差が争われたもう1つの最高裁判決です。
パラセメントタンク車の運転手で、定年退職後に再雇用された嘱託社員のケースとなります。当該賃金種目の趣旨を個別に検討した上で、精勤手当(休日を除いて全ての日に出勤したものに与える手当)と超勤手当(時間外手当)について、不合理な差別であると判断しました。
しかし、その一方で、「能率給及び職務給が支給されないこと」「住宅手当及び家族手当が支給されないこと」「役付手当が支給されないこと」「賞与が支給されないこと」については区別が不合理とは認められないと判断しました。
定年退社後の再雇用ということから、上記のような判断になったと思われますが、少子高齢化社会で労働者が不足している現状において、熟練した労働者を確保していくという観点からすると、別の考え方もあるのかもしれないとは思います(政策論のようにも思えますが)。
いずれにせよ、正社員と有期労働契約を結んだ社員との賃金などの区別をどのような視点で定めればいいのかについては、今後の参考になる判例だと思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87785

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所