よしの法律事務所コラム

2017.09.28更新

大分県の教員採用試験において不正が行われたことから、その不正によって不合格となった受験者らに対して大分県が損害賠償金を支払ったところ、大分県の住民らが県知事に対して、不正に関与した者たちに求償権を行使しないことの違法の確認などを求める住民訴訟を提訴しました。その最高裁の判決となります。
最高裁は、請求を認めなかった高裁判決の一部を破棄して、福岡高裁に差し戻しました。破棄した部分は、退職金を受け取った後に、不正が発覚して退職金の返納命令によって退職金相当額が回収されたことが求償権の行使に影響を及ぼすのかという論点の部分です。不正に関与した者で在職中の者は、いずれも懲戒免職となり、退職金も支給されなかったようです。そうすると、本来支払われるべきでなかった退職金の返還を受けたにすぎないのですから、それが求償権を行使しなくていい理由にならないというのはそのとおりだろうと思います。その一方で、この部分しか破棄しておらず、県教委の幹部職員からの寄付金については、求償権を行使しない根拠として認めました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87074

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2017.09.23更新

東京電力の福島原発事故をめぐる集団訴訟において全国で2番目に出された判決となります。
裁判所は、「経済産業大臣は、・・・被告東電に対し、津波による浸水から全交流電源喪失を回避するための措置を講ずるように命ずべき規制権限を有しており、遅くとも平成18年までに敷地高さO.P.+10mを超える津波が発生することを予見できたというべきである」と被告である国に津波の発生を予測できたことを認定しました。しかし、「その予見可能性の程度及び当時の知見からすると、本件事故後と同様の規制措置を講ずべき作為義務が一義的に導かれるとはいえず、また、原告ら主張の各結果回避措置を採ったとしても、本件事故を回避できなかった可能性もあり、同年の時点で、同権限を行使しなかったことは、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められ」ないと結果の回避ができなかった可能性があるなどとして、国の責任を否定しました。
伊方原発に関する平成4年10月19日の最高裁判決は、当時の原子炉等規制法に関して「原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり、その稼働により、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって、原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置、運転につき所定の技術的能力を欠くとき、又は原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ、右災害が万が一にも起こらないようにするため、原子炉設置許可の段階で、原子炉を設置しようとする者の右技術的能力並びに申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性につき、科学的、専門技術的見地から、十分な審査を行わせることにあるものと解される」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54276
原発事故による災害が「万が一にも起こらないようにするため」の対応が必要であったはずなのに、津波を予見できたにもかかわらず、対策不可能だったとでも言うような判決の判断には説得力がないように思います。

弁護士吉野隆二郎

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投稿者: よしの法律事務所

2017.09.15更新

水俣病に関する最高裁の判決です。確定判決によってチッソから損害賠償を受け取った原告が、水俣病の特措法によって、水俣病の認定を受けた者とみなされることになったことから、熊本県知事に対し、公健法25条1項の規定に基づく障害補償費の支給を請求した事案です。
福岡高裁は「公健法13条1項は、損害が塡補された場合、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れると規定するにとどまり、補償給付の額及び損害の塡補額を考慮することなく、およそ補償給付の支給義務が免除されるとは定めていない。また、同法に基づく補償給付の制度は、純粋な損害塡補以外の社会保障的な要素を含むものと解されるから、前訴確定判決に基づく賠償金をチッソが完済したことによって熊本県知事が当然に当該補償給付の支給義務を全て免れると解することもできない」として不支給処分を取り消していました。
最高裁は水俣病の補償の仕組みを前提に「同法4条2項の認定を受けた疾病による健康被害に係る損害の全てが塡補されている場合には、もはや同法に基づく障害補償費の支給によって塡補されるべき損害はないというべきであるから、都道府県知事は、同項の認定を受けた者が、当該認定に係る疾病による健康被害について原因者に対する損害賠償請求訴訟を提起して判決を受け、これにより確定された民事上の損害賠償義務の全ての履行を既に受けている場合には、同法に基づく障害補償費の支給義務の全てを免れると解するのが相当である」と判断して、福岡高裁の判決を取り消して、請求を認めませんでした。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87053
水俣病の被害者への救済の観点からすると、社会保障的な要素も障害補償費の支給を認めるという考え方も十分に説得力があるように思えます。
水俣病特措法第3条において「この法律による救済及び水俣病問題の解決は、継続補償受給者等に対する補償が確実に行われること、救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済されること及び関係事業者が救済に係る費用の負担について責任を果たすとともに地域経済に貢献することを確保することを旨として行われなければならない」と定められていることとの関係をどう考えればいいのか、考えさせられる判決になります。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2017.09.08更新

3才の幼稚園児がプールでおぼれて亡くなったという事案の判決です。
判決では「担任として、園児を監視し、その生命身体の安全に配慮すべき義務があったにもかかわらず、本件事故当時、プールサイドに散乱したビート板・遊具の片付けに気を取られ、本件プール内の園児の動静を注視せず、この義務を怠ったという被告(担任)の過失がなければ、本件事故が生じなかったことは明らかであ」ると判断し、さらに園長及び学校法人にも連帯責任を認めました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=86767
本件は、平成23年7月11日に生じた事件ですが、報道によれば、今年の8月24日にも、さいたま市で4才のこどもがプールの事故で亡くなるという同じような悲しい事故が繰り返されているようです。
危険だからプール遊びはやらないという考え方はどうかと思いますが、幼稚園や保育園でのプール遊びには、細心の注意が必要だということを考えさせられる判決です。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所