よしの法律事務所コラム

2017.06.27更新

JR西日本の元代表取締役らに対して、脱線事故の刑事責任が認められるかが争われた刑事事件の最高裁の決定となります。「本件事故以前の法令上、ATSに速度照査機能を備えることも、曲線にATSを整備することも義務付けられて」いなかったこと、「JR西日本の職掌上、曲線へのATS整備は、線路の安全対策に関する事項を所管する鉄道本部長の判断に委ねられており、被告人ら代表取締役においてかかる判断の前提となる個別の曲線の危険性に関する情報に接する機会は乏しかった」ことなどを根拠に「被告人らが、管内に2000か所以上も存在する同種曲線の中から、特に本件曲線を脱線転覆事故発生の危険性が高い曲線として認識できたとは認められない」と判断して、過失を認めませんでした。
列車運行に関する事故に対して、民事責任だけでなく、刑事責任まで問えるのかという観点からすると、やむを得ない結論なのかなという気がします。しかし、指定弁護士が起訴をした前提が、「曲線の半径を600mから304m」「制限時速が従前の95kmから70km」変更され、その結果「通勤時間帯の快速列車の本件曲線における転覆限界速度は時速105kmから110km程度に低減し、本件曲線手前の直線部分の制限時速120kmを下回るに至」っていたことや、「運行開始に伴うダイヤ改正により、1日当たりの快速列車の本数が大幅に増加し」たことからは、本当に事故の危険性の増加が予見できなかったのだろうか、という点にはやや疑問が残るように思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86834

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2017.06.20更新

玄海原子力発電所の3号機及び4号機の差し止めを求めた仮処分を却下した決定です。決定では、原子力の規制に関して「とりわけ、福島第一原発事故の深い反省に立ち、その教訓をいかしてそのような事故を二度と起こさないようにするとともに、我が国の原子力の安全に関する行政に対する損なわれた信頼を回復し、当該行政の機能の強化を図るため」に行った改正であり、「このような本件改正後の原子炉等規制法における規制の目的及び趣旨からすれば、改正原子炉等規制法は、最新の科学的、技術的知見を踏まえた合理的に予測される規模の自然災害を想定した発電用原子炉施設の安全性の確保を求めるものと解されるのであって、改正原子炉等規制法の規制の在り方には、我が国の自然災害に対する発電用原子炉施設等の安全性についての社会通念が反映しているというべきである」と判断しています。
しかし、原子力規制委員会の田中俊一委員長は記者会見において、規制の数値目標に関して「もちろん数値目標は大事ですけれども、そのことで、では国民が納得しているかというと、必ずしもそれはそうではないので、そこのところは、安全目標というのは決して国民と我々が合意して作った値ではないということだけは御理解いただかないといけないと思うのです」と目標値が国民の合意によってできたものでないという発言をされています。また、原子力規制委員会の基準を充たせば安全なのかという質問に対して「安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということです。ですから、これも再三お答えしていますけれども、基準の適合性は見ていますけれども、安全だということは私は申し上げませんということをいつも、国会でも何でも、何回も答えてきたところです」と基準に適合しても安全を担保するものでもないという発言もされています。
そうであるにもかかわらず、裁判所が規制基準について「安全性についての社会通年が反映されている」と判断することには違和感を覚えます。
また、配管の安全性に関して「あえて炉心を損傷させるような評価条件を定めて評価しても、福島第一原発事故後新たに設置した設備が機能し、原子炉格納容器が破損するには至らないことが確認されているのであり、仮に、炉心溶融が生じたとしても、そのことから直ちに原子炉容器及び原子炉格納容器が破損するおそれがあるとも認め難い」という判断は、安全神話の復活を思わせるもので、それで本当に安全なのかの疑念はぬぐえません。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=86841

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2017.06.13更新

「公害の根絶と平和を求めて」を合言葉に1976年から6月の環境週間に毎年行われ、今年で42回目となる総行動に参加してきました。6月7日から8日にかけて、環境大臣交渉や一斉の官庁交渉などが行われ、私は有明弁護団として農水省交渉に参加しました。現在の最大の課題は、東京電力による原発被害者の問題であること、そして、被害者は救済されていないことも実感できました。

http://www.jnep.jp/kogai-sokodo/index.html

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所

2017.06.06更新

GPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査の適法性が争われて大きく報道された判決となります。
最高裁は、「憲法35条は、『住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利』を規定しているところ、この規定の保障対象には、『住居、書類及び所持品』に限らずこれらに準ずる私的領域に『侵入』されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である」と判断しました。すなわち、憲法35条には「私的領域に侵入されることのない権利も含まれる」ということを最高裁が認めました。
そして、それを前提に、「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴法上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たるとともに、一般的には、現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから、令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである」と判断しました。
結論としては、別の証拠から有罪が認定できるということで、上告は棄却されましたが、GPS捜査に令状を必要とした判断は、十分な意義があるように思います。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86600

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所