2016.04.26更新

現在日本で唯一運転している川内原子力発電所の運転の停止を認めなかった福岡高裁宮崎支部の決定です。
「どのような事象が生じても発電用原子炉施設から放射性物質が周辺の環境に放出されることのない安全性を確保することは、少なくとも現在の科学技術水準をもってしては不可能であるから、人格権に基づく妨害予防請求としての発電用原子炉施設の運転等の差止請求においても、当該発電用原子炉施設が確保すべき安全性については、我が国の社会がどの程度の水準のものであれば容認するか、換言すれば、どの程度の危険性であれば容認するかという観点、すなわち社会通念を基準として判断するほかはない」と「社会通念」が判断基準になると述べています。
そして、「発電用原子炉施設の安全性が確保されないときにもたらされる災害がいかに重大かつ深刻なものであるとしても、抗告人らが主張するような発電用原子炉施設について最新の科学的、技術的知見を踏まえた合理的な予測を超えた水準での絶対的な安全性に準じる安全性の確保を求めることが社会通念になっているということはできず、また、極めてまれではあるが発生すると発電用原子炉施設について想定される原子力災害をはるかに上回る規模及び態様の被害をもたらすような自然災害を含めて、およそあらゆる自然災害についてその発生可能性が零ないし限りなく零に近くならない限り安全確保の上でこれを想定すべきであるとの社会通念が確立しているということもできない」と述べています。
この決定では、予想を超えるような自然災害が生じた場合には、福島第一原子力発電所の事故と同様の事故が起こっても仕方がないというのが、「社会通念」であると考えているようですが、本当にそうなのかという疑問を私は持っています。福島第一原子力発電所の事故と同じような事故が生じても仕方がないと多くの国民が本当に思っているのでしょうか。そして、現在の熊本地震の状況を見ると、川内原子力発電所が運転をし続けていることについては不安に思っています。

http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/16-04-06/

弁護士吉野隆二郎

2016.04.22更新

日本で始めて、運転中の原子力発電所(高浜)の運転停止を命じた仮処分決定です。この決定に対してはいろいろな意見があるようですが、「福島第一原子力発電所事故によって我が国にもたらされた災禍は、甚大であり、原子力発電所の持つ危険性が具体化した。原子力発電所による発電がいかに効率的であり、発電に要するコスト面では経済上優位であるとしても、それによる損害が具現化したときには必ずしも優位であるとはいえない上、その環境破壊の及ぶ範囲は我が国を越えてしまう可能性さえあるのであって、単に発電の効率性をもって、これらの甚大な災禍と引換えにすべき事情であるとはいい難い。」と福島第一原子力発電所の事故の被害の甚大さに向き合って結論を出した姿勢には共感が持てます。

http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/16-03-09/

決定は上記アドレスにアップされています。

弁護士吉野隆二郎

2016.04.14更新

1997年4月14日に、諫早湾干拓事業による潮受け堤防による締切りによって、当時、日本最大の干潟といわれた諫早干潟が失われました。その締切りの様子が全国に「ギロチン」として報道されたことから、全国の干潟の保全運動に火がつき藤前干潟の埋立てが中止されるなどの一定の成果がありました。しかし、その一方で、南西諸島最大の干潟と言われた泡瀬干潟の埋立事業は進み、大浦湾の辺野古を埋立てようとする国の計画は変更されていません。締切りから満19年、20年目に入る年に、再度、干潟の重要性の認識が広がればと思います。

弁護士吉野隆二郎

潮受け堤防締切り直後ー大量に横たわるハイガイの死骸

2016.04.01更新

臨時株主総会において、取締役を解任する決議を提案したところ、株主総会で否決されたため、その「否決された決議」の取消を求めた事案の判例です。
最高裁は、「一般に,ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし,当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから,ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当である。」という判断を示しました。確かに、取締役の解任決議が否決された後は、取締役の解任の訴えを提起するのが一般的だとは思いますので、言われてみればそうなのかなという判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎