よしの法律事務所コラム

2017.09.23更新

東京電力の福島原発事故をめぐる集団訴訟において全国で2番目に出された判決となります。
裁判所は、「経済産業大臣は、・・・被告東電に対し、津波による浸水から全交流電源喪失を回避するための措置を講ずるように命ずべき規制権限を有しており、遅くとも平成18年までに敷地高さO.P.+10mを超える津波が発生することを予見できたというべきである」と被告である国に津波の発生を予測できたことを認定しました。しかし、「その予見可能性の程度及び当時の知見からすると、本件事故後と同様の規制措置を講ずべき作為義務が一義的に導かれるとはいえず、また、原告ら主張の各結果回避措置を採ったとしても、本件事故を回避できなかった可能性もあり、同年の時点で、同権限を行使しなかったことは、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められ」ないと結果の回避ができなかった可能性があるなどとして、国の責任を否定しました。
伊方原発に関する平成4年10月19日の最高裁判決は、当時の原子炉等規制法に関して「原子炉が原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する核燃料物質を燃料として使用する装置であり、その稼働により、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであって、原子炉を設置しようとする者が原子炉の設置、運転につき所定の技術的能力を欠くとき、又は原子炉施設の安全性が確保されないときは、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど、深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ、右災害が万が一にも起こらないようにするため、原子炉設置許可の段階で、原子炉を設置しようとする者の右技術的能力並びに申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性につき、科学的、専門技術的見地から、十分な審査を行わせることにあるものと解される」と判断しました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54276
原発事故による災害が「万が一にも起こらないようにするため」の対応が必要であったはずなのに、津波を予見できたにもかかわらず、対策不可能だったとでも言うような判決の判断には説得力がないように思います。

弁護士吉野隆二郎

福岡市博多区博多駅前2-10-12-208

投稿者: よしの法律事務所


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