2016.06.17更新

札幌ドームでの野球観戦中にファウルボールが顔面を直撃して右眼球破裂等の傷害を負われた方が、北海道日本ハムファイターズ、札幌ドーム、札幌市に対して損害賠償の請求を求めた裁判に関する判決です。
球場の安全対策について「本件当時,本件ドーム(特に本件座席付近)における上記内野フェンスは,本件ドームにおいて実施されていた他の上記安全対策を考慮すれば,通常の観客を前提とした場合に,観客の安全性を確保するための相応の合理性を有しており,社会通念上プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない」と判断して責任を認めませんでした。
しかし、被控訴人が「野球観戦の経験も硬式球に触れたこともなく,硬式球の硬さやファウルボールに関する上記危険性もほとんど理解していなかったこと」「そのような被控訴人が本件試合を観戦することになったのは,控訴人ファイターズが,新しい客層を積極的に開拓する営業戦略の下に,保護者の同伴を前提として本件試合に小学生を招待する企画(本件企画)を実施し,小学生である被控訴人の長男(当時10歳)及び長女(当時7歳)が本件試合の観戦を希望したため,被控訴人ら家族が本件企画に応じることとし,被控訴人も,長男及び長女の保護者の一人として,幼児(当時4歳)である二男を連れて,本件ドームに来場したという経緯であったこと」「本件座席は,内野席の最上部や外野席等と比較すると,相対的には上記のファウルボールが衝突する危険性が高い座席であったが,本件企画において選択可能とされていた席であったこと」などの事実を前提に「少なくとも上記保護者らとの関係では,野球観戦契約に信義則上付随する安全配慮義務として,本件企画において上記危険性が相対的に低い座席のみを選択し得るようにするか,又は保護者らが本件ドームに入場するに際して」ファウルボール等の「危険があること及び相対的にその危険性が高い席と低い席があること等を具体的に告知して,当該保護者らがその危険を引き受けるか否か及び引き受ける範囲を選択する機会を実質的に保障するなど,招待した小学生及びその保護者らの安全により一層配慮した安全対策を講じるべき義務を負っていたものと解するのが相当である」として、ファイターズにのみ責任を認めました。
プロ野球観戦に伴う損害賠償請求事件で、球団に責任が認められたという珍しいケースですが、球場自体の安全対策について責任を認めたものではありませんので、球場観戦の際にはファウルボールには十分に気をつけないといけないということを再認識させられました。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85916

弁護士吉野隆二郎