2016.02.26更新

退職金に関する最高裁の判例です。「就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である」という一般論を前提に、同意書に署名押印がなされているだけでは不十分で「同意書への同人らの署名押印がその自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点」からの検討が必要と判断しています。このケースは、自己都合での退職金が0になってしまうという不合理な変更内容であったことも大きな理由だとは思いますが、労働条件を労働者にとって不利益に変更する場合には、客観的・合理的な理由を十分に説明することが必要だということを考えさせられる判例だと思います。

弁護士吉野隆二郎